急増する高齢者のEC使用率の波に乗れるジャンルは?事例やクレーム対策のポイントも
令和2年度の総務省統計局の調査によると、ネットショッピング利用世帯の年齢階級別で55~64歳の世帯が6割近い割合まで拡大しています。
参照:新型コロナウイルス感染症で変わるネットショッピング-家計消費状況調査の結果から-|総務省統計局
また、65歳以上の世帯の利用も増加。
5月には3割を突破し、6月には31.2%となりました。
高齢者に商材やサービスを販売するのにECサイトも見逃せないチャネルとなってきたわけです。
そこで、ここでは高齢者向けのECサイトについてご説明します。
内容は次のとおりです。
高齢者向けの
- 人気のECサイト
- 人気のあるジャンル
高齢者向けECサイトの
- 制作・運営上で配慮すること
- トラブル対策
これから高齢者向けにECサイトで商材・サービスを販売したいと考えている企業の担当者様は、ECサイト制作前にご一読ください。高齢者に求められるECサイト制作のコツを把握しましょう。
1.高齢者に人気のECサイト
高齢者向けの人気ECサイトは、楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングの大手3社が上位を占めています。
引用:シニア層のサイト利用状況|インテージ
それぞれの人気の理由を見ていきましょう。
楽天市場
楽天市場は高齢者の利用率が83.3%もあり、高齢者に一番人気のECサイトです。人気の理由は、もともと高齢者層の利用が多かったことで、高齢者の使いやすいデザインやシステムがすでに整っているからだと言えます。
また、クーポンの発行やポイントが貯まりやすいため、お得にショッピングを楽しみたい女性ユーザーに人気が高いことが特徴です。
Amazon
Amazonは、飲料、書籍、医薬品までさまざまな生活用品がそろっているため、総合的な買い物をすることが可能です。生活に必要なものをまとめてネット上で購入できるため、買い物に行く負担が減らせるメリットがあります。
検索結果には商品ごとに見やすく掲載され、最安値が表示されるため、求めている商品をなるべく安く買いたい人にとって使いやすいつくりも魅力です。
Amazonはすでに買いたい商品が決まっていて、商品名やブランド名で検索する男性ユーザーが多い傾向があります。
Yahoo!ショッピング
Yahoo!ショッピングが支持される理由は、Amazonや楽天にはないPayPayでの決済ができる点です。
営業支援システム事業を展開するモズエンタープライズがおこなった調査によると、60歳以上の高齢者のキャッシュレス決済利用率は約3割に。そのうち約半数がクレジットカードを利用し、PayPayなどのPayサービスを利用している高齢者は1割にとどまっているといいます。
引用:キャッシュレス決済のご利用について (2019年12月25日調査)|モズインタープラズ
引用:キャッシュレス決済利用者の決済方法について (2019年12月25日調査)|モズインタープラズ
この結果だけ見てみると、PayPayが使えるメリットは高齢者にはないのではと思われるかもしれません。
しかし国ではキャッシュレス化を推し進めているため、これから高齢者層の利用率が増加すると考えられます。
Amazonや楽天と比較をすると全利用者数は少なめですが、ポータルサイト「Yahoo!」の高齢者の利用時間はトップです。アプリに不慣れな高齢者でも、「Yahoo!」からYahoo!ショッピングへはアクセスがしやすいため、高齢者向けの商品販売は今後伸びていくことが期待されています。
参照:2020年4月Monthly Totalレポート トータルデジタル利用者数Top3
2.高齢者に人気の商品ジャンル
ECサイトは、ターゲットである高齢者向けにどのような商材やサービスを販売するかによって、サイトの目的や売上が違ってきます。
ここでは、高齢者がECサイトで購入する人気商品のジャンルをご紹介します。こちらを参考にして、販売ジャンルを明確にしていきましょう。
生活用品・衣類
高齢者がネットショッピングで購入するものとして利用頻度が高いのが「生活用品」です。生活用品とは、洗剤やティッシュペーパー、介護用品など生活に必要なものです。
また、衣服類を買う方も少なくありません。
食料品・飲料
高齢者がECサイトで定期的に購入するのが食料品・飲料です。
中でも特産品やお土産、飲料の水や酒などが商品として人気があります。
書籍
意外にも高齢者がECサイトで購入する頻度が高いのが書籍です。
これは、近年の本屋の減少によるものかもしれません。
家電製品・パソコン機器
高齢者がネットショッピングでよく買うものに白物家電とパソコン機器が挙げられます。
その理由としては、幅広く商品を選べ、商品運搬が簡単であるからだと言われています。
健康食品・サプリメント
普段は購入されないものの中で、高齢者がネットショップで買うようになったものが「健康食品」や「サプリメント」です。
BSチャンネルだけではなく、地上波でも健康食品やサプリメントのCMは増えています。
テレビCMの場合、申込窓口は電話の案内が多いのですが、今後インターネットが増えてくるでしょう。
3.高齢者向けECサイトの制作・運営で配慮すること
高齢者向けECサイトを制作・運営する上で、最も配慮すべきことは高齢者にとって使いやすくすることです。
ここでは4つのポイントをご紹介します。
1.会社概要と電話番号は目立つところに大きく表示すること
高齢者にとって、ネットで知らない相手からモノを買うのは不安なことです。
その不安を取り除くためにトップページの目につく場所に、会社名、住所、電話番号は表示してください。特に電話番号は、大きめに表示しましょう。
2.ボタンや文字サイズも大きく、拡大機能も持たせること
高齢者にとって見やすく使いやすいECサイトであることが基本です。
そのためにできるだけボタンやの文字サイズを大きくしてください。可能であれば、拡大機能があると商品の理解度が上がります。
3.カタカナ語は言い換えるか、注釈を入れること
高齢者にとって、カタカナ語は苦手なケースが多いです。
例えば、次のような場合は高齢者に分かりやすく言い換えて表記してください。
レビュー→お客様の声
ログイン→会員の方はこちら
FAQ→よくある質問
4.検索をシンプルにして、商品を見つけやすくすること
高齢者にとって欲しい商品がすぐに発見できるようにしてください。
そのために、トップページから商品紹介ページまでの導線もできるだけ簡潔にして、高齢者が迷わないようにしましょう。
4.高齢者向けECサイトのクレーム対策
ECサイトの買い物で高齢者が戸惑うのは、商品の注文や支払いの段階が多いようです。
たとえば、ECサイト上で申し込むのではなく、「電話」や「はがき」などの申し込み方法を選ぼうとする高齢者がいます。カード決済を躊躇する高齢者がまだまだ多いためです。
こうしたことがクレームにつながってきます。
これらのことがクレームにならないように以下のような対策をしてください。
まず、注文方法には「電話」や「はがき」、そして「FAX」を用意すること。
60代のFAX利用率は、約30%と言われているため、FAXで申し込みをする高齢者への配慮が必要です。(総務省の「平成27年版 情報通信白書」より)
次に、支払いにはクレジットカードやPayPalだけでなく、「代金引き換え」や「後払い」を入れてください。
前述したように、高齢者のキャッシュレス決済利用率は、約3割とまだまだ普及するのはこれからです。
支払い方法も幅広く選択できるようなECサイトは、高齢者の購入率アップが期待できます。
5.高齢者に使いやすいECサイトの事例
高齢者に使いやすいECサイトとは、前述の高齢者向けECサイトの制作・運営で配慮することを実際に行っているサイトです。ここでは参考にしたいECサイトを3つご紹介します。
世田谷自然食品
世田谷自然食品のECサイトでは、高齢者が利用しやすくするために全てのページで「電話番号」を表示しています。
また、「ショッピングカート→買い物かご」といったように、カタカナ語は日本語に言い換えることで高齢者に分かりやすい表現にしています。
エムールライフ
エムールライフは、株式会社エムールの高齢者向けのイスや布団などを扱っているネットショップ(楽天内のショップ)です。
こちらのサイトは文字の大きさや動画による商品説明の充実など、高齢者に配慮した仕様なっています。電話での注文や問い合わせも可能です。
LOHACO
ASKULが運営しているLOHACOは、食品や日用品を販売するサイトです。
本サイトでは、コスメ・化粧品からお酒、お米などの食品やトイレットペーパーなど生活に必要な商品を幅広く取り揃えています。
高齢者にとって運びにくい、お米や水などの重い荷物を配送してくれるのが魅力です。
注文から到着までがスピーディーなので、すぐ必要な生活用品の注文に便利です。
参考:LOHACOのECサイト
以上ご紹介したECサイトは、高齢者にとって使いやすい配慮がなされていますね。
ECサイトを制作・運営する際の参考にしていただければと思います。
5.さらなる売上をアップするための3つの集客ポイント
高齢者向けのECサイトを立ち上げる際には、高齢者が使いやすいサイトであることが基本です。
それに加えて、集客を図る対策もおこなえば、売上アップにつながるでしょう。
最後になりましたが、高齢者向けのECサイトに集客を図るための3つのポイントをご紹介します。
1.「高齢者」「シニア」というワードを必要以上に使わない
「高齢者」や「シニア」というワードは、高齢者を不愉快にさせる可能性があります。
そのため、ダイレクトに高齢を連想させる言葉は、商品説明やキャッチコピーなどにはあまり使わないほうが得策です。
2.高齢者に縛られないターゲティング戦略を
仮に販売しようとしている商材が高齢者向けのものであったとしても、そこに付加価値として「健康」や「趣味」を加えることで、商材をプレゼンテーションすることになります。
このように高齢者というターゲットに縛られずに、ターゲットを広げたり、逆に絞り込んだりすることで、他のサイトとの差別化が図れます。
3.SNSを集客に活用する
SNSと言えばTwitterやInstagramなどが有名ですが、どちらのユーザーも若者が多いため、なかなか高齢者のみにアプローチするのが難しいでしょう。
ターゲットである高齢者に効果的にアプローチするためには、高齢者の利用率の多いSNSの活用をおすすめします。
そこでおすすめしたいのが、50歳以上のユーザー限定のSNSアプリ「おしるこ」です。
「おしるこ」は、“お隣さん同士の助け合い”をオンラインで実現するコミュニケーションアプリです。
オンラインを敬遠しがちな高齢者層の方々にも、安心・安全な交流を楽しんでいただける”つながる場”を提供しています。
「おしるこ」には、ユーザーが日記投稿をするとポイントが貯められ、そのポイントで好きな商品と交換できるしくみがあります。
高齢者に自社商品やサービスを体験してもらう機会があり、さらに商品掲載ページにはECサイトのリンクを掲載することも可能なため、ECサイトへの集客も図れます。
以上が高齢者向けのECサイトの集客を図るための3つのポイントです。
集客を図ることで、さらなる売上アップを目指してください。