シニアマーケティングのポイントを完全網羅!ペルソナ設定や成功事例をご紹介
「シニアマーケティング」という言葉が一般的になってきている中で、実際の成功事例は少ないものです。それは、シニアのペルソナやターゲティング設定の難しさが原因でもあります。
本記事では「シニアマーケティング」に難しさを感じている方に向けて、基本的なところから少し踏み込んだところまで、ポイントを解説します。
目次
- シニアマーケティングとは
- なぜシニアマーケティングは難しいのか?
- シニアマーケティングの4つのステップ
- ステップ1. ターゲティング
- ステップ2. ペルソナ設定
- ステップ3. カスタマージャーニーマップ策定
- ステップ4. プロモーション設計
- シニアマーケティングの成功事例
- シニアマーケティングは難しくない
1.シニアマーケティングとは
高齢化社会と言われる日本において、60歳以上のシニアの消費額は2025年には100兆円を越えると言われており、今後も成長することが見込まれています。(みずほ銀行産業調査部の資料より)
シニア市場に進出する企業も、今後増えてくると予想されます。マーケティング戦略をしっかりと練っていないと、これから激化するシニア市場を生き延びるのは難しくなるでしょう。
そこで重要になってくるのがシニアマーケティングです。しかし、シニアマーケティングとは具体的に何をすることなのでしょうか?
よく誤解されることが多いのですが、「マーケティング=広告などのプロモーション」ではありません。プロモーションはあくまでマーケティング活動の一つの要素です。
マーケティングの定義は諸説ありますが、ここでは「自社の商品・サービスを顧客に届けるための仕組みづくり」と捉えます。そのために、外部環境・市場の分析、自社で狙うべき市場・ターゲットの見極め、商品開発・設計、プロモーション戦略までの一連の流れが必要になります。
つまりシニアマーケティングとは、シニア市場において、自社の商品・サービスを顧客に届けるための仕組みを作ることです。
シニアに向けてどんな広告に出稿するべきか?といったプロモーションについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
2.なぜシニアマーケティングは難しいのか?
シニアマーケティングは難しいという声をよく伺います。
なぜシニアマーケティングが難しいかというと、マーケティングにおいて最も重要とも言える「顧客の理解」が難しいからです。マーケターが顧客であるシニアについて理解し、彼らの課題・ニーズを身をもって知る機会が少ないのです。
まずマーケター自身が基本的には企業に勤めており、ターゲットとなるシニアと同世代のマーケターはほとんどいないでしょう。65歳以上のシニア世代と普段から接している方も少ないのではないでしょうか。
そのためどうしてもデータに頼ることとなり実際のシニアの課題や要望、潜在的なニーズなど見つけにくい傾向にあります。
また、世間のシニアのイメージは「老人」というイメージが根強くあります。実際のシニア層は非常にアクティブな方が多いにもかかわらず、そのような世間のイメージに無意識に引っ張られてしまい、適切なターゲット像を描けないこともあります。
このようなシニア世代への理解の難しさが、シニアマーケティングを難しくしている要因だと考えられます。
3.シニアマーケティングの4つのステップ
ここからは、シニア世代の実態もお伝えしながら、シニアマーケティングのポイントとなる以下の4ステップについてご紹介していきます。
- ステップ1. ターゲティング
- ステップ2. ペルソナ設定
- ステップ3. カスタマージャーニーマップ策定
- ステップ4. プロモーション設計
ステップ1. ターゲティング
まず最初のステップとして、ターゲティングが重要になります。
ターゲティングとは、商品・サービスを売る相手(これをターゲットと言います)を絞り込むことです。
販売相手である顧客は、年齢や家族構成、職業、生活スタイルなど人によって違いがあるため、自分たちが販売する商品が誰にニーズがあるのか、いくつかのグループに分けてターゲットを絞る必要があるのです。この「ターゲットを絞ること」がターゲティングです。
ここではターゲティングのポイントを2つご紹介します。
年齢層によって大きく変わるトレンドを把握する
シニアのトレンドは大きく変わります。例えば、60代であれば新たな出会いや恋愛を求めて婚活をしてみたり、おしゃれに興味があるシニアはその年のトレンドカラーを取り入れてみたりと、とても積極的な方がおられます。
また、スマホやPCを使いこなしたり、YouTuberになってみたりと、若者のトレンドに挑戦する方もおられます。もちろん、その逆の傾向にあるシニアもおられますので、全てがトレンドに敏感であるわけではありません。
ただ、シニアによってはトレンドや最先端のスマホなどに興味があっても「この年になってそんなこと言っても……」と塞ぎがちになっている方がいることも事実です。
つまり、一言でシニアを一括りにして考えることはできず、どのようにターゲティングしていくかがポイントになると言えるでしょう。
「シニアマーケティング」におけるターゲティングは、いくつかの分類に分ける(例:「経済力」「健康志向」など)ことで絞り込みやすくなります。
経済力であれば、老後資産の有る無しによってかけられるアプローチが変わりますし、健康志向については、現在の身体状況が把握できればそれによって「介護予防」や「病状改善」などのアプローチができます。
興味関心の分野をピンポイントに絞り込む
そんな中で、もう一つのポイントとして挙げられるのは「興味関心の分野をピンポイントに絞り込む」です。
これまでシニア層は、「新しいものや若者文化を受け入れない、理解できない」「何かを学ぶのは大変、今更そんなことをしても…」と考えているのではという先入観がありませんでしたか?しかし、 それは一昔前のシニア層の考え方にすぎません。
シニアの方々は、これまでの人生で積み重ねてきた知識や経験が豊富です。ただし、それは経験のある分野に限られます。未経験だったり知識が無かったりするところについてはとても貪欲に学び、失敗を恐れず挑戦する方が多いため、ピンポイントでマーケティングを展開しニーズに訴求すれば、ヒットする可能性は大きく上がります。
ファッションやガジェット、シニアの恋愛など、ピンポイントで訴求することによって、シニアに響くマーケティングが展開できるようになります。
シニアのターゲティングの具体例は、こちらの記事もご参照ください。
ステップ2. ペルソナ設定
次にペルソナです。ペルソナは「架空のユーザー」という意味であり、ターゲットをさらに深めることで「具体的でリアリティのある人物像」を作り上げていきます。ペルソナを設定することで、社内(チーム内)の顧客イメージを統一させたり商品コンセプトをぶれさせないために効果があります。
特にペルソナの設定については、これまでのイメージと現状がなかなか一致しないことがあり、難しいようです。ターゲティングでは絞りきれないところを、ペルソナ設定の作り込みによって補っていくことになります。
ペルソナ設定のポイントを2つご紹介します。
時間の使い方まで設定する
シニアマーケティングにおけるペルソナ設定は、他の世代と比べると難しいと言われます。その理由は、シニアの「時間の多様性」の理解が難しいからです。
シニア層の人たちは、子どもや孫が手を離れたり定年退職したりすることで急激に時間が増加します。時間の増加については、「学校卒業から定年まで」の約40年と「定年後の時間」がほぼ同じと言われるほどです。「定年後の時間」は人それぞれではあるものの、それほどの余裕や使える時間が多いと言えます。
また、時間の使い方に定まった形はほぼありません。そういったことから、ペルソナを設定していくことに難しさがあるのです。
ペルソナ設定については様々なパターンがあると思いますが、例えば次のようなペルソナ設定ができるのではないでしょうか。
- 性別:男性
- 年齢:68歳
- 家族:妻と二人暮らし(子ども2人、孫1人)
- 生活:
- 朝6時起床、平日の日中(9時〜18時)は趣味やボランティアの時間。
- 18時以降は夕食や妻との時間を過ごし、21時に就寝。
- 週末になると孫が遊びに来るため、土日は孫のために時間を使う。
- 車が運転できるため、妻や孫とドライブに行くことを楽しみにしている。
- 日常生活や趣味にはそこまでお金がかからないため、ほぼ孫にお金を使う。
- 大きな病気はないものの、病院に行くことが増えてきた。
- 年を重ねるごとに体が思うように動かないため、ボランティアの時間を減らしつつあるが、同時に寂しいと感じるためにペット購入を検討中。
世間のシニアのイメージを鵜呑みにしない
そもそも、私たちはシニアに対してどのようなイメージを持っているでしょうか。マイナスイメージもプラスイメージもあると思われますが、近年のシニア層の方々は私たちの想像をはるかに超えています。例えば、スマホやPCなどを使いこなし、トレンドをうまく取り入れて生活している方も多くいます。
どうしても「シニアは考え方が難しかったり新しいものを受け入れられない」というイメージを持たれがちなところがありますが、実はそうではありません。
ペルソナ設定をするときには、偏ったイメージではなくできるだけ客観的に設定できるようデータを集めて、人物像を作り上げていきましょう。
シニアのペルソナの具体例は、こちらの記事もご参照ください。
ステップ3. カスタマージャーニーマップ作成
ターゲティングとペルソナで顧客となるシニア像が具体的になったら、次はカスタマージャーニーマップを作成していきましょう。
カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品・サービスと関わっていく一連の流れを可視化したものです。
自社の商品・サービスに対して、顧客の「認知」「情報収集」「比較検討」「購入」までの一連の行動を、どのように辿っていくかを考えていきます。
ここでのポイントは、ターゲットとなるシニアが、普段どこから情報を得ているかを具体的に思い浮かべることです。
シニアはテレビや新聞が主な情報源だと思う方もいるかもしれませんが、前章にも書いた通り、シニア世代でもインターネットを当たり前のように使いこなしています。ペルソナで設定した人物なら、一体何から情報を得てどんな感情を抱き、どんな行動をするか?ペルソナになりきった気持ちで、考えていきましょう。
シニア向けのカスタマージャーニーマップの作成方法は、以下の記事でも詳しく解説しています。
ステップ4. プロモーション設計
カスタマージャーニーマップで顧客の行動をイメージできたら、いよいよ広告・プロモーション設計に入ります。
ここまでのステップをきちんと押さえておくことで、効果的なプロモーションを検討・実施することができます。
広告をどんな媒体にどのようなメッセージで訴求するのかは、カスタマージャーニーマップに沿って考えると良いでしょう。
ペルソナの主な情報源によって、テレビCMなのかSNS広告なのか交通広告なのか、適切な接点を考えていきます(これをタッチポイントと呼びます)。
また、どの行動を促したいかによって、打ち出すメッセージは変わってきます。
例えば、まず認知をして欲しいのであれば商品・サービスの名前を覚えてもらったり、解決できる課題を伝えたりするのが有効ですが、すでにその商品を知っていて他社商品と比較している状態であれば、他社商品と比較した自社の商品ならではの強みをより訴求する必要があります。
ターゲット顧客であるシニアの立場になって、いつどんな広告メッセージを見たら購入意欲が湧くか?を具体的に考えることがポイントです。
シニアのプロモーションについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。
4. シニアマーケティングの成功事例
最後に、他社のシニアマーケティングの成功事例を2つご紹介します。
「ポケモン GO」×女性誌「ハルメク」の共同事例
「ポケモン GO」がスマホの位置情報を利用して外で歩き回って遊ぶゲームであるという特性に着目し、シニアの健康志向×アプリの運動促進効果を訴求し、利用促進を測った事例です。
実際に、「アンケート調査」と「座談会」を実施、そこから得られた結果から商品導入障壁についての仮説立案を行い、定量調査・定性調査をもとに、「ポケモン GO」の体験イベントを企画しました。
内容は、アプリ未体験者を集めて「ポケモンGO」を体験しながら、新宿御苑を半日散策するシニア向けウォーキングイベントを実施するというものです。
そして、「スマホ初心者でもわかる!『ポケモン GO』入門ガイド」を制作し、シニア層の新規利用拡大を実現させたのです。
年齢や性別といったデモグラ情報だけでなく、健康志向の高いシニアというペルソナ設定がシニアマーケティングを成功に導いた事例といえます。
参考:シニア女性×『Pokémon GO』 新宿御苑でのウォーキングイベントは大成功!
アナログ×デジタルを活用した象印「みまもりほっとライン」事例
近年、見守りサービスはさまざまなデバイスで多くの企業がローンチしていますが、給湯ポットといった日常的に馴染みのあるデバイスは象印マホービン株式会社ならではのサービスです。
とはいえ2001年当時は、遠隔からシニアを見守るという考え方は珍しく、新聞やテレビに取り上げられることも多かったようです。
その後も、シニアの情報源とその家族の存在をとらえ、アプローチ方法もスマホ対応のWeb広告や見やすい漫画形式の新聞広告を発表、アナログとデジタル両方からシニアやその家族にアプローチしたマーケティング事例です。
給油ポットであればシニア世代にも馴染みのある家電であるため、本サービスの利便性に魅力を感じた家族が導入を考え、一緒に使ってみようという検討・購買行動への後押しにも一役買いそうなプロモーションといえます。
5.シニアマーケティングは難しくない
ここまで、シニアマーケティングの定義と、必要な4つのステップのポイントを解説してきました。
シニアマーケティングでは顧客となるシニアの理解が難しく、それゆえにマーケティング戦略の策定も難しくなりがちですが、しっかりと今のシニアの状況を理解することが重要です。
ターゲティングからペルソナ設定、カスタマージャーニーマップやプロモーションの設計など、一つ一つ時間をかけて順を追って考えていきましょう。すでにこれらの戦略を作り込まれている方も、ぜひ今一度見直してみてください。
難しい年齢層だからこそ、丁寧なマーケティングを心がけましょう。
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