年を重ねるとともに徐々に耳が遠くなる高齢者は多くいます。これを「老人性難聴」と言い、文字通り加齢に伴い耳の聞こえが悪くなる疾患のことです。国内には約2000万人の人がこの症状を患っているとされています。
人の耳は120歳まで使えるようにできているようですが、これには個人差があり、早い人の場合、50代で耳に違和感を覚える人もいるようです。これは典型的な老化現象の1つであり、放置してしまう人も多いかもしれませんが、耳が聞こえないことの影響は大きいです。
また、耳が聞こえにくいのであれば、補聴器を使用すればよいと考える方も多いかもしれませんが、高齢者の多くは補聴器を嫌います。今回は、老人性難聴が生活に及ぼす影響や高齢者と補聴器の付き合い方について考えていきます。
参照:補聴器をつけないと「難聴」が認知症の原因になる(文春オンライン)
高齢者がとにかく補聴器を嫌がる理由
補聴器という便利な物があるのにも関わらず、実際に使用している人はわずか15%ほどとなっています。その背景には、金銭的な負担と高齢者が補聴器を使いたがらないという2つの背景があると考えられます。
金銭的な負担
補聴器を購入するとなるとかなり高額になります。高いものになると両耳で50万円程度のものもあり、簡単に手を出せるものではなくなってきます。もちろん、比較的安価なものもありますが、それでも5万円前後の場合が多いです。
この値段から、高齢者の補聴器に対する期待値は大きく膨らみます。しかし、以前の自分の耳と全く同じように聞こえるようにすることは難しく、買ったけど使わないという場合もあります。細かい微調節を繰り返せば、自然な状態に近づけることは可能なのですが、そのままタンスの奥底にしまってしまうことも多いようです。
見た目への固定概念
「補聴器をつけると老人だと思われる」「見た目がかっこ悪い」という理由から補聴器を使いたがらない高齢者も多くいます。
しかし、最近ではスタイリッシュでおしゃれなものも登場し、そのイメージを払拭するようなものが多くあります。それでも、昔からのイメージが先行してしまい、補聴器に対するイメージは未だ悪いままなのです。
聞こえないことに慣れてしまっている
そもそも長年老人性難聴を患っていると、聞こえないことに慣れてしまっている場合もあります。聞こえないことに慣れてしまうと、補聴器をすることで逆に多くの音が聞こえすぎてしまい、ストレスとなることもあるようです。
まずは、聞こえないことを自覚してもらい、聞こえないことに慣れてしまう前に補聴器を使うや病院へ行ってみるなどの選択肢を与えられると良いかもしれません。
聞こえないことで起こる生活の障害
耳が聞こえづらいことに高齢者は慣れているかもしれませんが、実際に生活にどのような影響があるのでしょうか?
意思の疎通が難しくなる
耳がよく聞こえないと意思の疎通が難しくなります。そうすると、言いたいことだけ言うようになり、会話のキャッチボールができなくなってしまうのです。
私の祖父もかなり耳が遠く、あまり会話が成り立たないこともよくあります。相手の話が聞こえないため、自分が思ったことを唐突に発するのです。しかし、その後もあまりよく聞こえないせいか、祖父が発した話題で話を始めても、会話が一方通行状態となってしまいます。
認知症のリスクが高まる
耳がよく聞こえないと認知症になるリスクが高まります。相手とコミュニケーションがうまく取れないため、社会的孤立状態となってしまいます。これは会話のキャッチボールができないこともつながります。
聞こえないことで日々の生活が楽しくなくなっていき、認知症のきっかけとなってしまうかもしれないのです。
まずは補聴器について理解してもらおう
家族に老人性難聴の方がいると、どうしても家族は意思の疎通が困難であったり、本人もイライラしたりと家族関係がギクシャクする原因にもなります。まずは、自分の耳の状態と補聴器に対する理解を深めてもらうことが大切です。
補聴器使用者の声を届ける
何か新しいものをトライする時は使用者の声が大切になってきます。どんなものでも初めて挑戦するときは、少し嫌悪感があるものです。実際に使用している人たちの声を届けることで使用するイメージが湧きます。特にその声が身近な人からだとより一層安心感がありますよね。
実は、話が常に一方通行状態だった私の祖父もついに補聴器デビューをしました。以前は補聴器は絶対に嫌だと言っていましたが、使ってみると割と快適なようです。よく聞こえない時もあるようですが、以前よりも意思の疎通が取れるようなり、会話も成立するようになりました。
また、みんなと一緒に会話ができるからなのか、以前よりも顔色が良くなり、元気になったように感じます。補聴器に対して固定観念があり、なかなか使おうとしない人も多くいますが、実際に使用している人の声を届けることで、少しだけそのハードルは下げることができるかもしれません。
補聴器購入に対する支援制度もある
補聴器はかなり高額な買い物のため、その金額から使用を諦めてしまう人も一定数いるようです。しかし、地域によっては補助金制度があり、補聴器の購入を支援してもらえる可能性があります。
また、補聴器相談医の資格を持つ医師に紹介状を書いてもらえば、補聴器の購入費用に対して医療控除が適用されます。ただし、この補聴器相談医の資格を持っている耳鼻咽喉科医は4割程度にとどまり、耳鼻咽喉科医なら誰でも紹介状を書けるというわけではないのです。
「補聴器を使いたい!」と思ったら、まずは補助金制度や医療費控除が利用できないのか調べてみましょう。金額が大きな問題となっている場合は、この制度によってグッとハードル下がるでしょう。
楽しく生活をするための選択肢として補聴器の使用を考えてみよう
加齢に伴い徐々に聞こえづらくなっていく老化性難聴、かなり多くの人が患っているにも関わらず、補聴器を使用している人の割合はかなり低くなっています。
背景としては、補聴器を高齢者が毛嫌いする場合や高額すぎて手が出せない場合など補聴器を使用しない理由は様々あるようです。しかし、放っておくと認知症につながることもあり、事態を悪化させてしまうかもしれません。まずは、補聴器を使う人にリアルの声を届けたり、補助金制度があることを説明したりと補聴器に対するハードルを下げてあげることから始めるとよいでしょう。家族みんなが楽しく暮らせるアイデアの1つとして補聴器という選択肢を考えてみてください。
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