突然ですがみなさん、高齢者(65歳以上)が運転した際の高齢者事故が年間何件発生しているかご存知でしょうか?
直近2020年では4,246件で交通事故全体の16.6%、2019年では5,524件で交通事故全体の18.1%です。
出典:警視庁”防ごう!高齢者の交通事故!”(警視庁交通総務課統計)
上記の表をご覧いただくと分かるとおり、件数だけで見ると減少傾向にありますが、割合で見ると昨年2020年を除き増加傾向にあります。
ニュースを見ていると”コンビニ店舗への追突(操作不適)”のような、ハンドル操作やアクセル・ブレーキ操作誤りが原因となる派手な事故ばかりがピックアップされがち。
しかしながら実際には、高齢者運転事故の原因は「安全不確認」が38.2%で圧倒的なのです。ちなみにハンドルやアクセルなどの「操作誤り(操作不適)」は、全体の6.2%で4番目となっています。
出典:警視庁”防ごう!高齢者の交通事故!”(警視庁交通総務課統計)
今回は、「高齢者事故と免許返納」についてお話させていただきます。
シニア世代が車を運転する理由
シニア世代が車を運転する主な理由として以下が挙げられます。
- 生活用品等の買い出し
- 通院
- 気分転換・趣味
このどれもが生きていくうえで必要なものばかり。
買い出しは言うまでもありませんし、人によっては毎日通院が必要な方もいらっしゃるでしょう。自身の通院でなくとも、家族のお見舞いや付き添いも同様に車が必要なケースが多いです。
そして一見不要ではないかと思われるのが「気分転換・趣味」です。他の2つに比べると必要性は低くありますが、精神衛生的に考えるととても大切なこと。
趣味や気分転換となるものを制限されると鬱々とするように、シニア世代が日々を楽しむための「車の運転・ドライブ」を制限されてしまうと、アルツハイマーや孤独死といった問題が加速する可能性もあります。
免許返納は簡単なことじゃない
高齢者の運転による事故がニュースでピックアップされるたびに、「免許を返納すべきだ」と世間は言います。
他者を傷つける、命を奪う前に免許を返納し車両の運転から卒業することは、事故を未然に防ぐ対策として最も手っ取り早く、確実でしょう。
しかしながら、それは他の移動手段があり自由に身体を動かせる場合の話。
住む地域の各交通機関がある程度整っているのであれば、バスや電車での移動がかないますし、駅やバス停までの距離を歩ける体力があれば問題ありません。
また、タクシーを利用するという方法もありますが、事あるごとにタクシーを利用していては金銭的負担がかかりますし現実的ではありません。
さらには郊外や片田舎に住む場合、公共交通機関も多くはありませんしスーパーや商店での買い物においても相当な距離があることも。
こういった事情もあり、やむなく自身で運転をするしかないシニア世代は多くいるでしょう。こうした背景も考えると、やはり「免許返納」は簡単なことではないのです。
自主返納のメリットと運転経歴証明書
免許返納は住む場所や生活スタイルによっては、とても難しいこと。しかしながらそういった問題をクリアしている方にとって、免許の「自主返納」にはメリットもあります。
そもそも免許返納をどのように行うかご存知でしょうか?
自主返納は「運転免許センター」や「警察署」で手続きすることができます。手数料も不要。
そして自主返納とあわせて、身分証明書の代わりとなる「運転経歴証明書」の発行申請もしておくことをおすすめします。
「運転経歴証明書」とは、過去5年間の運転経歴を証明するもので免許証と同等の身分証明書にもなります。いざというときに困らないよう、あわせて申請しておくと安心です。
(運転経歴証明書の発行には手数料として”1,100円”がかかります。)
また、自主返納の特典を受ける際に「運転経歴証明書」の提示が必要な場合もあるので注意。
運転免許を自主返納すると、各自治体等が設けている各種特典を利用できます。さっそく主な特典例をご紹介します。
- バスの切符・定期券の助成金交付
- 地域バスの運賃無料
- タクシー運賃割引(例:10%割引)
- バス・タクシーチケット交付(例:1万円分)
- 地域商品券交付
- 商品配達料金無料(スーパー・デパート等)
- 宿泊施設代金割引
- 眼鏡・補聴器購入代金割引
都道府県や自治体によって受けられるサービス・特典はさまざまですが、バスやタクシーなど交通機関に関する特典が多く用意されています。
また、地域の商店街でも各種割引が受けられるなど、協力店が多い場合も。うまく活用することで金銭面の負担は抑えられそうですよね。
さきほどもお伝えしたとおり、各種サービス・特典を受けるには「運転経歴証明書」の提示を必須とするところが多いです。そのため、免許返納と同時に交付申請をしておきましょう。
あなた”も”守る。高齢者講習と認知機能検査
おしるこの漬物読者のみなさまの中にも、普段から車を運転しているという方もいらっしゃるでしょう。
「まだまだ自分は大丈夫!」
「今は大丈夫だけど、さらに年を重ねたときが心配……」
すでに不安を感じている方も、まだ大丈夫と安心している方も、免許更新時に設けられているのが「高齢者講習」と「認知機能検査」。
この二つは、シニア世代の車両運転をサポートするためのもので「高齢者講習」は満70歳以上を対象に免許更新時に受ける講習。「認知機能検査」は満75歳以上を対象に行う検査のことです。
満75歳以上の方においては、高齢者講習の前に認知機能検査を受けることが義務付けられています。認知機能検査の結果次第で、高齢者講習の内容がかわります。
このほか、いつでも受けられる講習としてJAFが行っている「ドライバーズセミナー・シニアコース」というのもおすすめです。
この講習は50歳以上のベテランドライバー(運転歴1年以上)を対象としたもので、実技(実車)メインの内容。
高齢者講習や認知機能検査は、免許更新時に受けるものなので気軽に受けられるものではありません。それに比べ、JAFの講習は定期的に開催されているのが魅力。タイミングが合う際には、ぜひ積極的に参加してみてください。
(公式サイト:JAF 実技講習会)
同世代のドライバーはどうしているのか、気になるところですよね。
「実際に自主返納をして、その後の生活はどう変わったのか」
「運転時に不安に思うことや対策は行っているか」
身近に聞く相手が見つからないときには、シニアコミュニティアプリの「おしるこ」を覗いてみませんか?
同世代の生の声が聞けたり、相談することができます。今回お話したシニアの免許返納や交通事故について考えるきっかけにしてみてください。