高齢者の食生活とミールキット
高齢になると、バランスの良い食生活が難しくなることはご存じでしょうか?食事は日々の生活において大事な要素の1つですが、高齢者にとってはこの食生活が課題となっている場合も多いのです。実際に高齢者の口から食事が楽しいという言葉を聞いたことがある方は、意外と少ないのではないでしょうか?
本記事では高齢者が抱える食生活の課題と、最近注目されているミールキットに焦点を当てながら、深掘っていきます。
目次
- 高齢者の食生活の課題とは?
- 外出自粛によってミールキット が注目されている?
- 高齢者施設でもミールキットは注目されている?
- ミールキットは高齢者の食生活の課題を解決できるかもしれない
- 高齢者の食生活は課題となっている
高齢者の食生活の課題とは?
食事が生活の中で大切であることは理解できますが、高齢者の食生活でどのような部分が課題となっているのでしょうか?
参照:高齢者の低栄養対策のための食生活とは(健康寿命ネット)
高齢者の6人に1人が低栄養状態
高齢者の食生活は、同じものばかりを食べていたり、食事や調理が億劫になってしまっていたりするという特徴があります。特に、単身者や高齢の夫婦2人暮らしの場合、この傾向が強く見られます。どうしても日々の生活に覇気がなくなり、食事も単調になってしまいがちのようです。
平成28年国民健康・栄養調査の結果によると65 歳以上の高齢者の低栄養傾向の割合は 17.9%と、約6人に1人がしっかりと栄養摂取を行えていない状態であることがわかります。男女別の結果は、男性 12.8%、女性 22.0%で、女性の方が食生活に課題があることがわかります。性・年齢階級別にみると、男女とも 85 歳以上の高齢者の低栄養傾向の割合がどちらも20%以上とかなり高くなっています。
低栄養による影響
多くの高齢者に低栄養の傾向があることは理解できましたが、低栄養による影響はどのようなものがあるのでしょうか?
低栄養状態は、体に様々な影響を及ぼします。その1つが筋肉量の低下です。加齢とともに体力や筋肉量の低下は必然的に起こることですが、低栄養状態はこれを加速させてしまう恐れがあります。筋肉量が減少すると、転倒の危険性が高まり、骨折や捻挫などの怪我の原因ともなります。
さらに低栄養状態が続くと、血液中のアルブミンなどのたんぱく質が減り、免疫機能の低下や認知機能の低下など日常生活への大きな弊害も引き起こします。
外出自粛によってミールキット が注目されている?
外出自粛により、近年ミールキットの市場が注目されています。ここからはミールキットの現状や今後について解説していきます。
参照:「ミールキット」 2024年に1,900億円規模に(PR TIMES)
参照:【食品宅配売上高ランキング 2021年版】 実質伸び率はプラス8.7%/外出自粛で状況一変苦戦のミールキットも増収に(日本流通産業新聞)
ミールキット市場は拡大傾向
ミールキットとは、特定の料理(主に主菜や副菜)を作るための、カット済みの食材と調味料、レシピなどがセットになった商品です。調理の下準備が不要なことから、時短になり、調理が楽であることが特徴です。
近年、ミールキット市場は注目を集め、2024年度のミールキット市場は約1,900億円と予測されています。最近では様々な企業がミールキット市場に参入しており、業界内でも注目されていることがわかります。
苦戦していたミールキットも増収傾向
食品宅配売上高は、外出自粛の影響で特需となっています。実質伸び率はプラス8.7%になり、苦戦傾向であったミールキットも増収傾向となっています。
現在ではワクチンも進み、外出自粛が緩和され始めたことから、今後の動向が注目されています。ミールキットの認知と利用が広まったことで、今後も利用したいと考える人は一定数いるのではないかと考えられます。自宅での時間がコロナ前から多い傾向にある高齢者層のミールキット利用は、コロナ禍の影響があまりありませんでしたが、増収を達成しており、その需要が伺えます。
高齢者施設でもミールキットは注目されている?
ミールキットと聞くと自宅で利用するイメージがありますが、実は高齢者施設でも注目傾向にあるようです。
累計販売食数が6,200万食突破
宅配サービス「ヨシケイ」が、高齢者施設や障がい者施設のために開発したメニュー『ヨシケイキッチン!』は累計販売食数が6,200万食(2013年5月13日~2021年9月12日)を記録しました。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、食材セットのニーズが一気に高まったことが背景としてあります。
利用施設が増加中
ヨシケイキッチンのメニューは、調理の労力を軽減できる利便性や無駄がなく経済的である点が評価され、利用する施設が増加しています。また、利用者にとっては楽しく食べられて、しかも美味しいというメリットがあります。
新型コロナウイルスの影響で介護の負担は増加傾向にありますが、食材セットを利用するという工夫を行う施設が多い傾向にあります。このような背景から、ヨシケイキッチンの利用施設数は2021年9月末で4,000施設を突破しました。
ミールキットは高齢者の食生活の課題を解決できるかもしれない
ミールキットをうまく活用すれば、高齢者の食生活の手助けを行えるかもしれません。高齢者施設や障がい者施設で専用のミールキットが利用されていることを考えると、高齢者が自宅で利用することも可能であると考えられます。
ミールキットの多くは、自宅まで配達してくれるものがほとんどのため、外出が難しい高齢者でも気軽に利用することができます。
また、食事のバランスや調理のしやすさにこだわって作っている商品ばかりのため、食事や調理が面倒になってしまっている高齢者でも利用しやすいと考えられます。利用を開始してから慣れるまでは、手続きや注文などに家族や周りのサポートが必要かもしれませんが、問題なく使いこなせるようになれば日々の食事をサポートしてくれるでしょう。
高齢者の食生活は課題となっている
高齢者の6人に1人は低栄養傾向にあります。特に85歳以上となると低栄養傾向の高齢者の割合は20%以上と、かなり多くの方が食生活に課題を持っていることがわかります。
高齢者の多くは食事や調理が面倒になってしまい、本来は楽しいはずの食事が楽しめなくなってしまっています。そこで、ミールキットは高齢者の食生活の課題解決を助けてくれるものと考えられます。近年ミールキット市場は拡大傾向で、今後ますます拡大することが予想されることから、今後の展開が期待されます。