映画マイインターンは現実になり得るか
先日、お気に入りの洋画の一つマイ・インターンを見ていました。
この映画は前職から引退した70歳のベンが、シニアインターンとして40歳近く離れている女性CEOのアシスタントをします。
この映画が上映されたのは2015年で、もう6年前になるんですね。
当時は、プラダを着た悪魔の主演をしたアンハサウェイがCEOの役をするということで、世界中のミレニアル女性の中で話題になりました。
実際、私が当時見た時も、女性の活躍に焦点が向けられた話というイメージがあり、「CEOのジュールかっこいいな」と思ったくらいでした。
シニアインターンのベンが懐が広いジェントルマンでかわいくて、ほっこりしたけれど、シニアインターンは映画だけの話かなという印象でした。
しかし、今見てみると、
「いや、この光景は現実味を帯びてきているかも」
「これを参考にする企業が増えるのでは」
と思い始めました。
海外のシニアインターン事情
アメリカでも、そこまでシニアインターンの制度の導入は主流ではないそうですが、今後シニアインターンは増えていくと予測されています。
近年、PwC、メットライフ生命、ハーバードビジネス大学、マッキンゼーなどの大手企業は大学生よりも、60代以上のシニア世代から雇いたいという意向があるようです。
その理由としては、大学生にはないスキル、専門知識、そして今まで働いてきた中で得た人脈を持っているという点です。実際に、アメリカ合衆国労働省労働統計局による2012年の分析では、2020年までに55歳以上のインターンが25.2%まで増えると予測されています。
日本でのシニアインターン制度の可能性を考える
はたらこねっとのアンケート調査によると、65歳を過ぎても働きたいと考えている人は6割と半数以上。
その働きたい理由としては、生活費のためが一番多く、次に社会と接点を持ちたいためというのが次に多い結果でした。
また希望する雇用形態も正社員として働きたいという人が20%いる一方、パートやアルバイトとして働きたいという人が40%と上まるという結果でした。
映画内のベンもセカンドキャリアも社会と関わりを持って生活したいと思い、シニアインターンに応募しました。
シニア世代からの視点ではシニアインターン制度は需要があるように思えます。
企業側からの視点で考えると、シニア世代を雇う上で経費を抑えることができるという点で、メリットになるかもしれません。
改正高年齢者雇用安定法が2021年の4月に施行されたことで、企業が70歳になるまで社員に雇用機会を確保を求める法律です。
これは絶対ではなく、努力義務ですが、正社員として雇い続けるとなると、コストの拡大を避けられません。
出典:改正高年齢者雇用安定法とは 70歳までの就業確保求める(日本経済新聞)
上記の日経新聞の記事によると、企業の人件費は2040年に65〜69歳だけで、19年に比べ3割多い6.7兆円になるとのこと。
しかし、企業内で他の部署に移動させインターンとして働いてもらうことで、経費は抑えることができます。
シニア世代が若者と働く上で大事だと感じること
映画のマイインターンでは、このシニアインターンというプログラムによって会社にもCEOのジュールの生活にも良い影響を与えました。
なぜこう上手くいったかを考えると、シニアインターンのベンがとても謙虚な気持ちで仕事に取り組んでいたことが一つにあると思います。
ベンは、最初の頃はCEOのジュールズから考え方も違う役に立たない人材としてみなされていました。
ベンはジュールズのアシスタントとして任命されたにも関わらず、ジュールズは、あなたに任せられる仕事は正直ないと他の部署を進めたり、仕事をほとんど頼みませんでした。
しかし、ベンは常にポジティブで、自分ができることを探し率先してやります。
例えば、社内で郵便物を届ける女性をカートを押すことで手助けしたり、ジュールの悩みの種だった物置と化しているあるデスクの上を朝早く来て片したりします。
また、年下の同僚や上司に対してのリスペクトも忘れず、友達のように関わっていました。恋愛相談に乗ったり、一緒にパブに行き飲みに行き、距離を詰めていきます。
このように会社内の仲間から信頼を得るようになります。
彼にとってファッションECビジネスのスタートアップ企業というのが、真新しい世界で、それに関する知識が全くないというのもあるけれど、ここまで謙虚に対応し、大きく歳の離れた社員に馴染むということはとても難しいことだと感じます。
しかし、ベンは年齢で生まれてしまいがちな分断を埋めたことで、シニアインターンが成功しました。
シニアインターンに限った話にしてはいけない
会社の経営者層は50代以上の方が多いと思いますが、
- 最近の若い人は打たれ弱いというレッテルをつける
- 新卒は社会経験がないから意見を真剣に聞くに値しない
と考え、真剣にコミュニケーションをとり理解するという努力があまり見られないように感じます。
しかし、経営陣とは違う時代、違う環境で学んできたからこそ、異なる意見やアイディアも多く持っています。
これからは、今若い世代がメインの消費者層になるため、若い世代の意見に耳を貸す努力が必要になってきていると思います。
とはいえ、シニア世代の経験や知恵は若者はもちろん持っていません。
お互いの世代が理解し合い協力することが、グローバルなマーケットに立ち向かう上で必要になってくると感じます。