「QRコードシール」を取り入れる自治体が急増中!導入が進む理由と今後の課題
認知症が進んだ高齢者が迷って自宅に帰れなくなるといった事例が後を絶ちません。そういった事例を受けて、栃木市は連絡先などをデータ化したQRコード付きの「見守りシール」を導入することにしたとのことです。困っている高齢者を見つけた人がこのQRコードを読み取ると、インターネットの掲示板につながり、発見を知らせるメールなどが家族に自動通知される仕組みです。
参考:貼付したQRコードで高齢者保護 栃木市、「見守りシール」導入へ|毎日新聞
栃木市に限らず、認知症の高齢者に対して「QRコードシール」を取り入れる自治体が増えています。申請は市役所や地域包括センターなどで行い自治体によって多少運用方法は異なるようですが、無料で利用できる自治体がほとんどのようです。なぜここまで広がってきているのでしょうか?
目次
1.QRコードシールの導入が進む理由
QRコードシールの導入が進んでいる理由としては、
- 見守りだけではカバーしきれない現状
- 個人情報が守られるシステム
- 携帯電話やGPSよりコストがかからない
などがあります。
見守りだけではカバーしきれない現状
訪問介護や地域住民・自治体の見守りがあっても、24時間見守ることは不可能です。家族がいても知らないうちに家から出てしまうこともあります。見守りだけではカバーしきれないのが現状です。
個人情報が守られるシステム
従来であれば、名前や住所を書いたワッペンを衣服に貼り付けたり、名札を首からぶら下げたりといった対策をしていました。名前や住所がわかれば誰かの力を借りて自宅に戻ってくることができる反面、個人情報が筒抜けになってしまうリスクがありました。
QRコードなら、個人情報は伏せつつも、基礎疾患や対応の仕方を発見者に知らせることができます。
携帯電話やGPSよりコストがかからない
携帯電話やGPSを自治体で導入するのはコストの観点から難しいのが現状です。また、運用するにあたって懸念点があるのも事実です。
携帯電話を所持している高齢者もいますが、実際のところ「電話の仕方がわからず、電話を取ることしかできない」方もいるようです。
持ち歩くGPS端末を自宅に忘れたり、自分で充電ができなかったりして、居場所がわからなくなってしまう可能性もあります。
こういった理由から、QRコードシールを採用する自治体が増えていると考えられます。
2.QRコードシールには懸念点もある
便利で安全性も高いQRコードシール。一方で気になる点もあります。
- データ管理への心理的抵抗感・更新の問題
- シールを取り付けたものを身につける必要がある
- 場所の特定は発見者と家族が掲示板で行う仕組み
データ管理への心理的抵抗感・更新の問題
データ管理に抵抗感がある家族もいるかもしれません。個人情報が不具合で流出することがないとは言い切れないためです。
また、データの更新方法も気になるところです。データの住所や健康状態が登録時と違うのに、更新されていない状態では混乱してしまいます。
シールを取り付けたものを身につける必要がある
シールは衣服にアイロンで取り付けるタイプが主です。
普段よく着る上着につけるのが良いと思われますが、薄着の季節ににTシャツ一枚一枚につけるのは難しいかもしれません。カートや杖につけるという手もありますが、身につけていなければ使用できないので、QRコードも万能とは言い切れないところです。
場所の特定は発見者と家族が掲示板で行う仕組み
QRコードシールを利用して家族と連絡が取れた後、場所の特定、健康状態についてはインターネット上の掲示板で発見者と家族がやりとりをする仕組みです。(※掲示板ではなくコールセンターにつながる仕組みの自治体もあるようです)
発見者・家族ともに土地勘があればスムーズかもしれませんが、高齢者が自宅からかなり離れていた場合や発見者が土地勘のまったくない方だった場合、場所の特定は時間がかかってしまいそうです。
3.QRコードシールを安心して使っていくために
普及し始めたQRコードシールをもっと安心して使うためには、どのようにしたら良いのでしょうか?対策としては次のようなものが考えられます。
- QRコードを複数のものにつける
- 現在地が送れる仕組みを作る
- 定期的にデータを見直す仕組みを作る
- QRコードシールの認知度を高める
QRコードを複数のものにつける
QRコードを複数のものにつけておけば、複数のうち1つは機能するのではないでしょうか。
すでに2017年の段階で埼玉県入間市では、QRコードシールの他に爪に貼るネイルシールタイプのQRコードを導入しています。
(参考:「爪QR」は認知症患者を助けたか?|日経クロステック)
爪であれば苦痛も少なく、手ぶらでいなくなっても使うことができます。QRコードが削れてしまったり、剥がれてしまったりとこちらも万能ではないですが、複数のQRコードを利用することでカバーできる範囲が広がるはずです。
現在地が送れる仕組みを作る
掲示板で現在地が送れる仕組みになれば、場所の特定がしやすくなるかもしれません。住所がわかれば地図アプリで場所を特定はできますが、住所がわからない、あるいは地図上ではわかりにくい住所の可能性もあります。
個人情報保護の観点から難しいのかもしれませんが、実現したら場所の特定はもっとスムーズになるのではないでしょうか。
定期的にデータを見直す機会を作る
住所や健康状態が古いデータのままですと、いざというとき困ったことになりかねません。変更の際は登録をした市役所や地域包括センターなどに変更登録の手続きをする必要があるようですが、この手続きを忘れる方もいそうです。
掲示板を通して変更の申し込みをしたり、有効期限を設けたりして、データを見直す機会を作る必要があるのではないでしょうか。
QRコードシールの認知度を高める
まだまだ認知度の低いQRコードシール。シールにも「れんらくさき」などと表記されていますが、知らない方は見落としてしまう可能性もあります。若い方には特に認知されていないサービスなので、ポスターや広報で認知度を高めていく必要があると思われます。
4.QRコードシールが認知症の高齢者の救世主となりうるか
QRコードシールを導入するメリットは、「安心を低いコストで手に入れられる」ところだと思います。一方で、一見万能にも感じられるQRコードシールだけでは、認知症の高齢者の徘徊を100%防げるわけではありません。
地域の見守りはもちろん、周囲の認知症の高齢者への理解も必要だと感じています。QRコードシールをはじめとしたシステムと人的な環境の双方があってこそ、より万全な対策ができると思います。
また、認知症になった場合を想定して、相続や葬式の準備をしておくといった対策もできると安心です。認知症になると公的な手続きもできなくなってしまうかもしれません。家族や周囲の人と話しあって、認知症になった場合の対応をあらかじめ決めておくのも大切ですね。
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