免許返納で家計は圧迫される?
近年、高齢者の免許返納が話題となっています。最近では免許返納への認知度も高く、実際に返納する高齢者も一定数いるようです。しかし、高齢者は免許返納後、どのように生活していくのでしょうか?あまり運転をしなくても生活でき、ただ免許を返納していなかった高齢者にとっては大きな生活の変化ではないかもしれませんが、地方に住んでいる人にとっては一大事です。
本記事では高齢者の免許返納事情とそれに伴う家計の変化に注目していきます。
目次
- 高齢者の免許返納事情
- 免許返納によって高齢者の家計は圧迫される?
- デマンドタクシーは免許返納者の強い味方?
- 免許返納をしたら、どこへも行けない・お金がかかるは間違えかも
- 免許返納の動きと行政サービスの発達は今後も注目ポイントである
高齢者の免許返納事情
高齢者は免許返納に対してどのように考えているのでしょうか?またどのような経緯で免許返納をしようと思うのでしょうか?まずは高齢者の免許返納事情を見ていきます。
参照:運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果(警察庁)
運転する必要がなくなったり、家族の勧めで免許返納を検討する
免許返納をしようと思うきっかけは、「運転する必要がなくなったように感じたとき」と「運転に自信がなくなったように感じたとき」が半数以上を占め、「家族等に勧められたとき」が約3割という結果になりました。
この結果から約半数が自らの考えで免許返納に至っているということがわかります。また家族も高齢者の運転に対して関心があり、免許返納を促す行動を取っていることが明らかです。
また、自主返納者の約半数は免許を返納することに対して、ためらう理由はなかったと回答しています。
都市規模が小さいほどに免許返納に課題あり
免許返納に都市規模は影響するのでしょうか?高齢者の運転頻度を都市規模別に見てみると、人口が少ない地域ほど運転頻度が高いことがわかります。多くの場合、車がないと何もできないという状況に近いことが想像できます。結果として、免許返納が進まない状況にあります。
「自主返納をしようと思ったことがあるか」という質問に対しても、都市規模が小さいほどに「自主返納しようと思ったことはない割合」が高くなっています。都市規模によって車が運転できなかった場合の利便性がかなり異なることがわかるでしょう。
免許返納によって高齢者の家計は圧迫される?
免許返納によって高齢者は今までできていた車やバイクの運転ができなくなります。そうなると移動には家族や友人の手を借りるか、公共交通機関を活用することとなります。公共交通機関(特にタクシー)を多く利用した場合、高齢者の家計は圧迫されそうです。でも実際はどうなのでしょうか?
結論、免許返納をしたからと言って、家計が圧迫されることに直結はしません。車の維持費を比較しながら、高齢者の家計は本当に圧迫されるのかに迫ります。
参照:車の維持費って年間でいくら必要?(コスモMyカーリース)
車の維持費は普通自動車の場合、年間50万円以上
車を所有するとどうしても維持費が必要となります。自動車税や自賠責保険、駐車場代、ガソリン代など様々なお金がかかります。その年間総計は普通自動車の場合は548,160円、軽自動車の場合は434,990円とされています。車は乗らない場合でも維持するのにかなりの費用がかかることがわかります。
免許返納をし、車を手放す場合はこれらの費用がかからなくなるため、普通自動車を所有・利用していた場合には年間約50万円の節約ができることになります。
免許返納をしても家計が圧迫されないようなシステム作りが進んでいる
免許返納をし、車を手放した場合には車の維持費が必要なくなります。その分、タクシー代や公共交通機関の利用料金が必要になってきます。
最近では免許返納をした高齢者や車を運転できない人向けに行政サービスが整い始めています。埼玉県行田市や群馬県館林市では免許返納者にタクシー券の配布を行っています。他の地方自治体でもデマンドタクシー(乗合タクシー)の普及やバスの運賃割引、商品券の贈呈など様々なサービス拡充が進んでいます。
参照:行田市の運転免許自主返納及び高齢者の支援施策等について(埼玉県庁)
参照:運転免許返納者に対するタクシー券の交付(館林市)
デマンドタクシーは免許返納者の強い味方?
デマンドタクシーとは、一般的なタクシーとは異なり、事前登録や予約が必要な一種の乗合タクシーです。最近では行政と連携してタクシー会社が運営していることが多くなっています。
多くのデマンドタクシーは、エリア指定(町内のみ)や乗降車可能スポット(基本的に駅や病院、スーパーなど)といった制限があります。バスや電車と並ぶ、より利便性が高い新たな公共交通機関とイメージするとわかりやすいでしょう。
低価格で利用できる
まずデマンドタクシーは通常のタクシーと比較してかなり低価格で利用できます。これは地方自治体によって料金設定が異なりますが、500円前後からスタートすることが多いです。また変動制の運賃設定ではなく、わかりやすい定額制の運賃設定を行っている場合もあります。町内限定や乗降車可能スポットが設定されていて、限定的なエリアのみでの利用となるため、このようなわかりやすい料金設定ができるのでしょう。
ワンコインから利用できるとなると、往復で1,000円です。週に3回程度出かけるだけであれば、それほど大きな出費にはなりません。
バスや電車に比べて利便性が高い
デマンドタクシーはバスや電車に比べて利便性が高くなっています。バスや電車の場合には、バス停や駅まで自力で行く必要があります。しかし、デマンドタクシーの場合は自宅の目の前から利用できることがほとんどです。
足腰や不自由になってくる高齢者にとっては、ありがたいメリットでしょう。特に地方に住んでいて、バス停や駅までのアクセスが良くない場合には、そこまでの交通手段としても活躍します。
免許返納をしたら、どこへも行けない・お金がかかるは間違えかも
免許返納をした場合、なんとなくどこへも行けなくなってしまうだろう、今よりもお金がかかるだろうというイメージがあるかと思います。しかし、車の維持費やガソリン代を考えてみると、うまく公共交通手段やデマンドタクシーを活用することで、家計を圧迫することなく外出できます。駅まで行ければ、そこから電車や新幹線などを利用して旅行へも行くことも可能です。
一方で地方に住んでいる場合や、タクシーが入りづらい場所に住んでいる場合は少し不自由な生活を強いられてしまうかもしれません。ただし、免許返納をすると、どこへも行けない・お金がかかるということは必ずしもイコールではありません。
免許返納の動きと行政サービスの発達は今後も注目ポイントである
今後、免許返納が増えれば、行政もそれに伴ってサービスの検討・展開を行っていくことが考えられます。そのため、免許返納=お金がかかるものではなくなっていくでしょう。行政がどのような対応を行うかによって、高齢者の生活スタイルは変化していくのではないしょうか。
行政の対応を観察しつつ、高齢者の生活スタイルに寄り添うことで、新たなビジネスチャンスもあるでしょう。高齢者をターゲットにした広告は、デマンドタクシーを運営しているタクシー会社の広告枠を活用することも1つの集客手段と考えられます。
当メディアでは、シニアビジネスに役立つ情報を発信しています。今後も定期的に発信いたしますので、御社のビジネスのヒントとしてお役立ていただければと思います。