高齢者の「働く」をサポート!不安に特化したビジネス学習プランやプラットフォームの創設とは
家電量販店ノジマは80歳が上限だった雇用制限を事実上撤廃しました。これまで定年が80歳だったことも驚きますが、定年を撤廃している企業は他にもあり、YKKグループも今年4月に定年を廃止しています。
参考:「80歳以上の新入社員も採用…日本で「定年廃止」相次ぐ」(ハンギョレ)
クボタや三菱マテリアルなど定年を引き下げる企業もありますが、2021年4月に「高年齢者雇用安定法改正」が施行されたことで、多くの企業は70歳までの雇用を確保する環境整備を行うと予想されます。
この背景には、労働人口の減少と高齢者の勤労意欲が合致しているためでしょう。
しかし、再雇用後に新たな定年の年齢まで心身の健康を保ちながら働くことができるか、課題も生まれてきます。
その課題の解決のひとつが、高齢者のエンプロイアビリティ(就業能力)を高めることです。
現在の高齢者は、エンプロイアビリティを高めるサポートを求めているのではないでしょうか。
働く高齢者のニーズに合わせた生涯教育やビジネス学習プラン、もしくは学習プラットフォームが今後大きな注目を浴びるでしょう。
目次
1. 高齢者の高まる就業への意欲と不安
令和3年版高齢社会白書では、60歳以上の4割が「収入の伴う仕事をしたい(続けたい)」と答えています。
参考:「第3節 〈特集〉「国際比較調査に見る日本の高齢者の生活と意識の特徴」(概要)」(内閣府)
一方で5割近くの高齢者が「収入の伴う仕事をしたくない(辞めたい)」と答えています。
この二つの層に隠れた心理的内訳を考えていきたいと思います。
積極的勤労意欲と消極的勤労意欲
「収入の伴う仕事をしたい」層のうち、全ての方が積極的に勤労意欲があるのではなく、例えば以下のような層が4割のなかに内在していると考えられます。
・積極的勤労意欲を持つ高齢者=「社会に関わりたい」「自分の能力を生かしたい」など
・消極的勤労意欲の高齢者層=「年金だけでは生活できない」など
また「働きたくない(辞めたい)」とされている層の方も、同じではないでしょうか。
・積極的未就労(退職)=「働かなくても生活ができる」など
・消極的未就労(退職)=「仕事をしても、どうせつまらない」「以前再雇用で働いたが条件が悪かったので、もう働きたくない」などの労働市場のミスマッチ
このような複雑な層が内在していると考えられます。
参考文献:「高齢者雇用の何が問題か(高齢者の労働市場を作り出す)」(リクルートワークス研究所)
内訳の心理とは
消極的勤労意欲を持つ高齢者は、勤労意欲を持たざるを得ない層でしょう。
そのため消極的勤労意欲を持つ高齢者は、消極的未就労者と同じ不満や不安を持っているのではないでしょうか。
「本当は働きたくない」心理は、個人の理由や家族などの事情も絡むと思いますが、高齢者ならではの不安や不満が大きく関係しているはずです。
2. 高齢者の不安に特化した学習プラン
では、働きたい高齢者は、自身が働き続けるために具体的にどんな不安を持っているのでしょうか。
高齢者の働く場合の不安TOP3は、
1位 自身の体力
2位 自身の健康維持
3位 十分な所得
となっています。
参考:「高齢者雇用に関する調査2020」P.15(日本労働組合総連合会)
高齢者向けの学習プランは、こうした不安や不満の解消に特化していることが必要です。
資格取得など実務に直接役立つ学習だけではなく、高齢者の低下していく認知や体力を向上させる学習プランも高齢者は望んでいるでしょう。
学習プランは高齢者の認知や体力にアプローチする学習と、所得を維持する(高める)学習、その二種類に分けて考えてみましょう。
学習にも様々なタイプがあることで、より多くの利用者が見込まれます。
では、既存のパソコンや簿記など、就労者の労働の市場価値を向上させる生涯学習だけでなく、どのような新規プランが適切でしょうか。
例に沿って考えていきたいと思います。
高齢者の認知能力を上げるプランとは
体力と共に低下するのが、記憶や認知の低下です。
それらの低下に伴い心理面でも不安を感じたり、共感しづらくなったり多面的思考ができにくくなっていきます。
高齢者が働くことに自信をなくしていくきっかけは、体力や認知機能の衰えを感じるからでしょう。
そういった高齢者の不安に応えるプランを考えてみてはいかがでしょう。
論理トレーニング、メンタルサポート力、推論トレーニングなどを「老化防止プラン」として提案してみてはいかがでしょうか。
高齢者特有の「話が長い」「理解が遅い」などもトレーニングで改善できれば、高齢者を取り巻く就業環境や他世代との交流も好転していきます。
働く高齢者に向けた体力や認知力トレーニングが、大きなトレンドとなりそうです。
他世代からも求められる学習とは
高齢者の就労については、高齢者自身だけでなく職場の現役世代にとっても、課題があります。
現役世代が求めるスキルと高齢者のスキルに差が生じる可能性があります。一方、高齢者とコミュニケーションがうまくとれない現役世代の問題もあるでしょう。
定年を引き上げた企業がこれらの不満を抱えないよう、企業向けの学習プランも今後ニーズが高まるのではないでしょうか。
3. オンラインで学習が加速化
コロナによる外出規制で、ネットでの学習や講演のオンライン化も進みました。
さらに、高齢者のインターネット利用も増えています。
こうした状況から、オンラインを使った高齢者の学習の加速化と学習機会の増加が期待されます。
高齢者向け学習プラットフォームも
現在は若者や中年向けのオンラインの学習プラットフォームがありますが、今後は高齢者専用のプラットフォームも需要が高くなるでしょう。
オンラインで資格取得を目指したり、ビジネススキルを向上させたりする高齢者が多くなると見込まれます。
また講演会は講座と比べ、比較的安価で利用しやすい面があります。
過去動画も含めオンライン講演会の機会、種別を豊富にすることも、充実した学習プラットフォームとして利用者の満足に繋がり、講座の受講にも繋がる期待があります。
学習を通して、就労もオンライン。雇用のマッチング度を高めるキーにも
高齢者のなかには、働きたくても家庭の事情で働けない高齢者がいます。
そうした高齢者がスキマ時間に自宅で働ける環境や能力も、オンライン学習を通し可能となっていきます。
高齢者の雇用のミスマッチの要因のひとつに「勤務日数と時間が希望と合わない」があります。
就労のオンライン化で、雇用のマッチング度は向上する可能性があるでしょう。
4. まとめ
上記の新規プランだけでなく、既存の学習プランを「働く高齢者の不安や不満の解消」に合わせ細分化し組み替えることで、高齢者向け学習プランとして作成することが可能です。
市場価値を高める能力だけでなく、認知や体力の向上も、高齢者のエンプロイアビリティ(就業能力)の向上に繋がります。
今後は、オンライン学習の加速や利用の増加が予想されます。「高年齢者雇用安定法改正」により高齢者向け学習は、さらに大きな注目を集めるのではないでしょうか。