シニアの抱えるデジタルデバイドの現状と対策を徹底解説
デジタル社会の進展に伴い私たちの生活は大きく変わりました。
しかし、このデジタル化の波に乗り切れない人々もまだ存在しています。
「デジタルデバイド」と呼ばれる現象をご存じでしょうか。デジタルデバイドは、デジタル技術やインターネットへのアクセスや利用に制限があることを指し、情報やリソースへの均等なアクセスが困難な状況を生み出しています。
そこで本記事ではデジタルデバイドの現状とその対策について解説します。シニア向けのデジタルサービスを検討している担当者の皆様は、ぜひ参考にしてください。
目次
1. デジタルデバイドとは
デジタルデバイドとは情報通信技術の恩恵を受けることのできる方とできない方の間に生じる格差のことで、「情報格差」と訳されることが多いです。
デジタルサービスが拡大する現代社会においても、人々に対して平等にサービスが届いているとは限りません。もしくは、届いていても使えないという方も一定数存在します。
このようなデジタルデバイドには以下のような要因が背景にあるといわれています。
- 高速インターネット接続の利用が困難な経済状態
- デジタル技術やツールの利用に必要なスキルや知識不足
- インターネットの普及率が低い地域であること
特にシニアにとっては、デジタル機器の操作やオンラインの利用に慣れていない方が一定数存在します。「教えてくれる家族や友人がいない」「ネット環境が整っていない」「個人情報の扱いといったセキュリティが不安」などが背景にあり、情報収集やオンラインサービスの活用に苦労することが多いです。
デジタルデバイドは経済や社会参加の格差を拡大させ、機会均等性に対する課題を引き起こしかねません。まさに、デジタル社会の抱える重要課題といえるでしょう。
2. シニアのデジタルデバイドの現状
総務省の調査によると、60歳以上の多くのシニアがスマートフォンやタブレットといったデジタル機器を活用していることがわかっています。
スマートフォンやタブレットの利用に関して、全体では「よく利用している」または「ときどき利用している」と回答した人の割合が77.8%。年齢別に見ると、18~29歳では利用率がほぼ100%に近く、60~69歳では73.4%、70歳以上ではわずか40.8%と年齢が上がるほど利用率は低下しています。
このように、シニアのスマートフォンやタブレットの利用率は70歳以上が非常に低くなっており、世代間での利用状況の格差が存在していることがわかるでしょう。
内閣府はさらにデジタルを利用しないシニアに焦点をあて、その理由を調査しています。
スマートフォンやタブレットを「ほとんど利用していない」もしくは「利用してない」と回答した方の利用していない理由には、70歳以上で「自分の生活には必要ないと思っているから」(52.3%)、「どのように使えばよいかわからないから」(42.4%)、「必要があれば家族に任せればよいと思っているから」(39.7%)となっています。
ついで「情報漏洩や詐欺被害等のトラブルに遭うのではないかと不安だから」(23.2%)、「購入や利用にかかる料金が高いと感じるから」(16.6%)という不安や不満も見られました。
上記のように、シニアの中にはスマートフォンやタブレットに対する必要性を感じていない、操作方法が分からない、と考えている方々が一定数存在することも明らかになっています。
デジタルサービスは人々の生活の利便性を向上させる多くのメリットが存在します。
一方で、デジタル活用が進まないことでメリットを享受できなくなり、デジタル社会から取り残される方々の存在も無視してはいけません。
3. シニアのデジタルデバイドによって生じる問題
シニアに多くみられるデジタルデバイドは、日常生活だけであらゆる問題が生じます。
ここでは、デジタルデバイドによって起こりやすい3つの問題を紹介します。
コミュニケーション不足による孤立
デジタルデバイスに縁のない生活を送っていると、メールやSNS、ビデオチャットなどを通じたオンラインによる友人や家族との交流や社会的な参加の機会が奪われます。
たとえば、SNSを通じたグループ活動に参加できなかったり、家族とのコミュニケーションが減り、孤立した状態になってしまうのです。
災害や非常時の情報取得が制限される
2011年の東日本大震災震災当日から、被災地の状況や避難所情報、被害の拡大状況などがTwitter上でリアルタイムに報告されたことはデジタルデバイドを解消する革新的な使われ方でした。その結果、被災者やボランティア、支援団体がTwitterを通じて救援活動を組織し、物資の要請や被災地のニーズに対応できたのです。
災害大国とも呼ばれる日本では、インターネットやスマートフォンを日常的に使っていないことで、災害や非常事態時の情報収集や公的なアナウンスが取得できない恐れがあります。
医療や公共サービスが受けにくい
医療や公共サービスもデジタルシフト化が進んでいます。
身近にデジタルツールがないシニアにとっては、今後、オンラインでの医療相談や予約、公共サービスの手続きなどが困難になるでしょう。
オンライン予約システムが使えないために医療機関の利用が困難になったり、デジタル上での公共サービスの利用が難しいために手続きに時間と労力を要する場合が考えられます。
そしてできない、使えない、という理由から医療・公共サービスが届けられない人々が出てきてしまうのです。
4. シニアのデジタルデバイドの対策3つ
シニアがデジタル機器を通して情報や社会的なつながりにアクセスし、より充実した生活を送るためにも、今後デジタルデバイド問題の解決は必須課題といえます。
ここでは具体的な対策を3つ紹介します。
ビジネスチャンスのヒントも隠されていますので、シニア向けデジタルサービスを企画検討している担当者もぜひご覧ください。
1. デジタルリテラシー教育の強化
1つ目は、シニアのデジタルリテラシーを強化教育プログラムの実施です。
デジタルツールの基本的な操作やインターネットの利用方法、オンラインセキュリティの知識を身につける支援を行います。最近は公共図書館や地域センター、ボランティア団体などでデジタルリテラシーに関する講座やワークショップを開催する団体も増えてきました。
このような機会を通して、シニアが抵抗なくデジタルデバイスを利用できるようにサポートするのです。
2. インフラ環境の強化
2つ目は、シニアがデジタルデバイスやインターネットにアクセスするための環境整備です。自治体や企業が地域の公共施設や図書館に無料のWi-Fiを提供したり、高齢者向けのデジタルデバイスを貸し出したりすることで、アクセスの機会は拡大するでしょう。
また、地域ごとのインターネットインフラの整備を行い、高速かつ安定したインターネット接続の実現も重要です。
そもそも「インターネットがつながらない」「接続や回線が遅い、重たい」という状態では、ますますデジタルデバイドが進んでしまいます。
3. サポート体制の強化
3つ目は、シニアがオンラインサービスを利用する際のサポートを充実させることです。
専門のヘルプデスクやサポートセンターを設置し、問い合わせやトラブル対応の支援体制を強化することで、安心してシニアはデジタル機器を活用することができます。
また、デジタルに不慣れなシニアに対しては、個別のサポートや訪問指導を提供する取り組みも有効です。
地域やITに強い若者がシニアのデジタル活用をサポートするというボランティアも増えています。
5. 平等に情報を手に入れられる社会こそがデジタル社会
デジタル化の恩恵を受けられないのは、本人の意思や能力の問題ではありません。
経済的事情や住まい、年齢は社会から取り残される理由ではないのです。
デジタルサービスも例外ではなく、デジタルデバイドを抱えるシニアに対しては国や企業などによる支援が欠かせません。
もし今後シニア向けのデジタルサービスを開始したいと思っている企業担当者は、50歳以上の会員で構成されているSNS「おしるこ」をのぞいてみてください。
おしるこ会員になるためには、インターネットやスマートフォンが使えるだけでなく、個人認証が必要なのである程度ITリテラシーが必要です。
どのようなコンテンツや仕組みが「シニアのSNSへの参加」というハードルを下げているのか、シニア向けデジタルサービスのヒントがたくさん見つかるはずです。
ご興味を持たれた方は、お気軽にお問い合わせください。