シニアの生活を支える移動手段は?|シニアが抱える移動の問題点や免許返納後の移動手段について解説
超高齢化社会となった日本では、高齢者ドライバーの数も年々増加しています。
また高齢ドライバーによる事故を防ぐため、運転免許証の自主返納を促進する動きも活発化し、返納率も上がっています。
しかし、一方では車の運転に不安を抱えながらも「免許を返納できない」とマイカーに乗り続ける選択をせざるを得ないシニアが居るのも現実です。
そこで本記事では、シニアがマイカーを手放せない理由を考察しながら、移動手段のニーズについて解説します。
目次
- シニアがマイカーを手放せない理由
- 免許返納後も利用できる移動手段
- 高齢化に伴い、ますます重要視されるシニアの移動サポート
- シニアの移動サポートが浸透していない可能性
- 高まる需要に応えるため移動サポートを行う商品やサービスの認知度アップが重要
1.シニアがマイカーを手放せない理由

警察庁の調査で、2023年時点の65歳以上の免許保有者は約1,983万人に上る結果となりました。
65歳以上の免許保有者数は2022年と比べると0.9%増ですが、その中でも75歳〜79歳は10.3%増となり全年齢層の中でも一番高い増加率です。
しかし、2023年の運転免許自主返納の件数は約38万件となり、2022年と比べると約15%減となっています。
また、2022年に実施された運転免許証の自主返納に関する調査では、70歳以上の855人のうち「運転免許証を自主返納をしようと考えたことがあるか」の問いに、53.5%が「自主返納は考えたことがない」と回答しています。
シニアの運転免許保有者が増えている一方で、免許の自主返納は進んでいないのが現状のようです。
シニアがマイカーを手放せない理由にはどんなものがあるのか、解説していきます。
生活が不便になる
地方都市では、シニアの移動には自家用車が欠かせない状態です。
令和3年に国土交通省は、人口規模などから東京23区や大阪市などの中心都市、その周辺都市を含めた三大都市圏とその他地方都市の交通手段構成比を比較調査しています。
その結果によると、三大都市圏では交通手段として自動車を選ぶ割合が平日で32%、休日では48.4%を占めています。
地方都市では、交通手段として自動車を選ぶ割合が平日で61.1%、休日では75.9%を占める結果となりました。
三大都市圏に比べ地方都市では、生活の移動手段が自動車中心になっていることがわかります。
さらに、地方では過疎化や高齢化が進行しており、通勤や通学だけでなく、通院や日常の買い物などの移動に気軽に使える交通機関が少なくなっています。
2023年の国土交通省の調査では公共交通の現状として、一般路線バスは2008年~2022年までで20,733kmの路線が廃止、鉄軌道は2000年~2022年までで1,158km・45路線が廃止になったと結果を発表しました。
特に地方在住のシニア層は、マイカーを手放せば「移動難民」「買い物難民」となって生活に支障をきたす状態になっている場合が多く、移動手段確保の課題を抱えています。
生活の楽しみが無くなる
マイカーを運転することが楽しみと繋がっているシニアも、免許返納をためらうようです。
先述した2022年実施の運転免許証の自主返納に関する調査では、運転免許証の自主返納できない理由として、「運転の趣味がなくなるから」(20.9%)の回答が3位となっています。
参考:株式会社栄チームライフデザイン「ナビクル」 運転免許証の自主返納に関する当事者とその家族の意識調査
運転は、車の操作や状況に合わせた判断が必要となり、脳をフル回転させたり身体を動かしたりするなど、シニアにとって多くの刺激があります。
また、外出の頻度を保ち、人と会う・会話をするなどの機会を持つことができる点も大きなメリットです。
マイカーを使用してきたシニアにとっては、車の運転は生活に欠かせないだけでなく、楽しみも兼ねているケースが多くあります。
免許自主返納後の移動手段の確保ができなければ、運転が可能な限りマイカーを使用したいと考えてしまうような状況なのです。
参考:都市における人の動きとその変化 地域の公共交通リ・デザイン実現会議 地域の公共交通を取り巻く現状と検討の視点・課題
高齢者の交通事故や免許返納問題については、下記の記事でも解説しています。
高齢者の交通事故の現状や免許返納のメリットなどについて知りたい方は、ぜひご覧ください。
2.免許返納後も利用できる移動手段
免許自主返納後、シニアの移動手段としてどのようなものがあるのでしょうか。
シニアの生活をサポートする、運転免許不要で利用できる移動手段をご紹介します。
利用できる移動手段は複数ありますが、移動距離や健康状態などによって利用できるものが異なるため、最適な移動方法の検討も必要です。
また、シニアが利用できる補助に関しても合わせて解説します。
公共交通機関(鉄道・バス)
地方在住のシニアには公共交通機関が発達しておらず、利用しにくいと感じるケースもあります。
しかし、大都市や都市の中心部に住むシニアであれば、運航している本数や路線も充実しており、便利に利用できるでしょう。
各社シニア向けの割引も用意されており、シニアにとっては利用しやすいポイントです。
例えばJR東日本では、50歳以上で「大人の休日倶楽部」というサービスに入会でき、年会費を払うことでJR東日本・JR北海道の切符が何度でも5%offで利用できます。
大阪市では、大阪市内在住の70歳以上は「大阪市敬老パス」を利用でき、Osaka Metroが運航する地下鉄・ニュートラム、大阪シティバスが運行するバスを1回50円で利用可能です。
タクシー・オンデマンド交通
タクシーは現在地から目的地まで直接移動でき、自力での移動が少ない距離で済むのが大きなメリットです。
また、タクシーの利用方法と似たオンデマンド交通もシニアには便利でしょう。
乗り合いタクシーのようなシステムで、同じ車両に乗り合わせる利用者宅を回り、各目的地まで送迎します。
予約必須で必ず座れる上、一般のタクシーに比べて料金が安い場合が多く、鉄道やバスが発達していない地域で注目されています。
シニアがタクシーを利用する際は、自治体によっては発行している補助券をもらうことが可能です。
オンデマンド交通も、自治体によっては年齢や障害の有無などで割引を受けられる場合があります。
電動アシスト付き自転車
電動アシストにより、坂道もスイスイ進むことができます。
二輪タイプが主流ですが、三輪タイプも販売されており転倒が不安な方は三輪タイプを選ぶと良いでしょう。
自力でペダルを漕ぐ必要があり、運動不足の解消にも役立ちます。
シニアカー

電動カートとも呼ばれている、屋外移動用の乗り物です。
ハンドル操作で運転しますが、歩行者扱いとなるため歩道を走行します。
走行スピードは時速6kmまでと定められており、この速度は成人が早歩きをする程度となっています。
歩行者扱いではあるものの、施設内の利用については各施設で入店の可否が異なるため、確認が必要です。
シニアカー購入の際、自治体によっては購入前の事前申請で補助金が利用できる場合があります。
また要介護2〜5の認定を受けている場合は、介護保険制度が適用され、レンタル費用を1〜3割負担することでレンタルすることも可能です。
3.高齢化に伴い、ますます重要視されるシニアの移動サポート
内閣府の発表では、日本は2023年10月時点で65歳以上の人口が3,624万人となり、総人口の29.0%を占めています。
今後、ますます高齢化は進むとされ、2037年には高齢化率が33.3%になる見込みです。
高齢化に伴い、シニアドライバーの割合も増えていくでしょう。
また、新型コロナの影響が薄まり、人口変動も東京一極集中の動きが復活しています。
総務省が調査した人口動態では、2024年1月時点で前年より人口が増加していたのは東京のみだったという結果でした。
そのため、地方の高齢化・過疎化も加速していくと考えられ、前述したシニアの「移動難民」「買い物難民」の問題は深刻化していく可能性があります。
シニアの移動をサポートするサービスはますます需要が高まると予想されます。
参考:内閣府 高齢社会白書 総務省 住民台帳に基づく人口、人口動態および世帯数
4.シニアの移動サポートが浸透していない可能性
警察庁の免許自主返納のアンケート調査で、「自主返納に関し高齢者講習で特に取り入れてほしいこと」という質問に運転継続者、自主返納者ともに「交通手段に関する支援制度の情報提供」という回答が40%を越えて1位になっています。
参考:警察庁 運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果
シニアが免許返納した後の移動手段について、さまざまなサービスが提供されている中で、多くのシニアがそのサービスを知り、自分に合うものを選べているという状況ではないようです。
シニアが移動にハードルを感じてしまうと、外出の機会が減り引きこもりになってしまう可能性があります。
社会との繋がりや日々の刺激が薄くなり、認知機能の低下に繋がるかもしれません。
しかし、移動サポートの認知度が高まれば、サポートの利用を検討したり、自身の都合に合わせた利用方法で、より便利な生活を送ることも可能です。
日常の最低限の外出だけでなく、趣味や楽しみのための外出も増え、生きがいを感じながら過ごすことに繋がるでしょう。
仕事や子育てから手が離れ、自身の時間を思い切り過ごすことができるシニアにとって、生きがいを持って時間を費やせることは大切です。
下記の記事では、シニアの「生きがい」についての説明や、生きがいを持つことの重要性を解説しています。
シニアの「生きがい」について詳しく知りたいという方は、参考にしてみてください。
5.高まる需要に応えるため移動サポートを行う商品やサービスの認知度アップが重要
シニアがマイカー以外の移動手段を選ぶことができるということは、免許返納後の生活もしっかりと充実したものにできるということです。
また免許の自主返納を検討したことがあるシニアは、移動サポートに対しての需要を感じていることも分かりました。
このシニアの需要にマッチさせるため、移動サポートのための商品やサービスについて、確実にシニア層へ情報を届けることが必要だと言えます。
そこで、シニア層が利用するSNSの広告活用がおすすめです。
シニア向けSNS「おしるこ」では、利用者が50歳以上に制限されているため、シニア層にダイレクトに情報を届けることができます。
また、「おしるこ」の中でサービス利用者が口コミを発信し、他のユーザーに魅力を広めることも可能です。
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