ユニバーサルツーリズムとは?事例と対応のポイント
ユニバーサルツーリズムという言葉は聞いたことがあるけれど、どのくらいの需要があるのか、具体的に何をすることなのかわからないといった方も多いのではないでしょうか。
ユニバーサルツーリズムは、年齢や障がいの有無にかかわらず、誰もが楽しめる旅行の提供を目指す取り組みです。シニア世代や障がい者が旅行に感じる課題を解消し、旅行機会の増加と市場の拡大を図ることが注目されています。本記事では、ユニバーサルツーリズムの概要、市場規模、シニア世代や障がい者が旅行で感じる課題、取り組み事例、そして対応方法について詳しく解説します。
目次
1. ユニバーサルツーリズムとは?
ユニバーサルツーリズムとは、年齢や障がいの有無に関わらず、すべての人が楽しめるように作られた旅行のことです。
国土交通省の観光庁は、ユニバーサルツーリズムの普及・推進活動を行っています。
地方自治体・NPOなどと協力し、地域がシニア世代や障がい者を受け入れる体制を整えたり、すべての人が楽しめるような旅行商品を作る支援を行ったりしています。
日本国内の人口は平成18年をピークに減少しており、旅行者に占めるシニア世代の割合は今後さらに高まると予想されています。
よって、ユニバーサルツーリズムの注目度も高まっているのです。
2. ユニバーサルツーリズムの市場規模
国土交通省観光庁が公表した「ユニバーサルツーリズムに関する調査業務報告書」では、ユニバーサルツーリズムの年間の市場規模は下図のように推計されています。
引用:国土交通省観光庁|ユニバーサルツーリズムに関する調査業務報告書
潜在的市場規模は、現在シニア世代や障がい者が抱えている「旅行に関する不便や困難」が解消された場合に増えると考えられる旅行回数から算出されています。
人数ベースでは1239.7万人、金額ベースでは8,881億円の市場拡大が見込まれるということです。
3. シニア世代や障がい者が旅行に感じている課題とは?
実際に、シニア世代や障がい者は旅行にどのような課題を感じているのでしょうか。
前述の観光庁の調査結果から、それぞれが感じている課題を具体的にご紹介します。
シニア世代が旅行に感じている課題
調査では、シニア世代に「どのような条件が整っていれば旅行に行きたいか」という質問を行っています。
回答は下記の通りです。
- 移動時間の短さ(64.2%)
- 観光地、飲食店、宿泊施設等までの移動のしやすさ(57.6%)
- 交通機関での乗降のしやすさ(47.5%)
シニア世代は、旅行で発生する移動に課題を感じていることがわかります。
「ユニバーサルツーリズム商品を利用したいか」という質問に対しては、シニア世代の約半数(47.5%)が利用したいと回答しており、年齢が高くなるほど利用したいという回答の割合が高くなっています。
今後も高齢化が進んでいくことを踏まえると、旅行者を増やすためには、移動に配慮した旅行商品の開発や、観光地の整備が必要と考えられます。
障がい者が旅行に感じている課題
障がい者に行った「どのような条件が整っていれば旅行に行きたいか」という質問に対する回答は、下記の通りです。
- 移動時間の短さ(46.9%)
- 観光地、飲食店、宿泊施設等までの移動のしやすさ(41.4%)
障がい者もシニア世代と同様に、旅行で発生する移動に課題を感じていることがわかります。
また、障がい者の旅行の支援を行う専門家である「トラベルヘルパー」に、旅行を支援する際に不便や困難を感じるのはいつかを質問した結果は、下記の通りです。
- 旅行計画の策定時(37.9%)
- 目的地まで・からの移動時(37.9%)
- 宿泊時(36.8%)
「旅行計画の策定時」に感じる課題を具体的に尋ねた質問では「バリアフリー情報がない、もしくは不十分」という回答が多くなっています。
障がい者の場合、旅行中だけでなく、旅行計画を立てる際に必要な情報が得られないという課題もあることがわかります。
4. ユニバーサルツーリズムの取り組み事例
すでに、ユニバーサルツーリズムに取り組んでいる企業や自治体もあります。
具体的な事例を3つご紹介します。
株式会社エイチ・アイ・エス「ユニバーサルツーリズムデスク」
大手旅行代理店である株式会社エイチ・アイ・エスは、新宿に「ユニバーサルツーリズムデスク」を設置。
介護・福祉関連の専門知識を持ったスタッフが、シニア世代や障がい者が安心して旅行ができるよう、旅行の相談に乗ったり手配を行ったりしています。
参考:株式会社エイチ・アイ・エス|ユニバーサルツーリズムデスクとは
大阪観光局「大阪ユニバーサルツーリズム推進協議会」
公益財団法人大阪観光局は、行政・交通・観光関連事業者で構成された「大阪ユニバーサルツーリズム推進協議会」とともに、ユニバーサルツーリズムの推進や観光整備を行っています。
大阪の「施設のバリアフリー情報」「おすすめモデルコース」などを紹介する専用ウェブサイトを立ち上げ、情報発信も実施しています。
兵庫県「ユニバーサルツーリズム推進条例」
兵庫県では、令和5年4月1日に「高齢者、障害者等が円滑に旅行することができる環境の整備に関する条例(通称:ユニバーサルツーリズム推進条例)」を施行。
「行きたいところに旅行できる環境の整備」を目指し、シニア世代や障がい者が安全で快適な旅行を楽しむことができるよう、環境の整備を行っています。
参考:兵庫県|ユニバーサルツーリズム推進条例(通称)について
5. ユニバーサルツーリズムの対応方法
シニア世代や障がい者に旅行を楽しんでもらうためには、具体的にどのような配慮を行えば良いのでしょうか。
国土交通省総合政策局「誰もが旅行を楽しめる環境づくりのために」を参考に、情報提供時・観光地・旅行商品で、それぞれ配慮すべき内容をご紹介します。
旅行情報提供時に配慮すること
旅行情報では、情報の正確性が欠けていたり、シニア世代や障がい者の個々の状態に合うかわからないことが課題になっています。
利用者の視点に立ち、情報が十分か確認することが重要といえます。
また、バリアフリー情報の提供窓口を一本化し「ここに問い合わせれば、バリアフリー情報はすべてわかる」といった状態にするのが理想的です。
観光地で配慮すること
観光地では、施設のバリアフリー化を進めることが集客に結びつくといった視点で、施設の整備を行うことが重要です。
実際に、障がい者に現地を訪れてもらい、どこをどのように整備すれば良いか改善点を出してもらうことも有効でしょう。
旅行商品で配慮すること
一般的なパッケージ旅行では、参加基準が明確になっていないことが課題です。
たとえば、周遊型の旅行では周る観光地が多く、歩く速度の遅いシニア世代は参加しづらいこともあります。
旅行商品には明確な参加基準を設け、パンフレットに記載するのが重要でしょう。
また、地域と連携してバリアフリー情報を収集し、多くの人が参加しやすい旅行商品の企画が求められます。
6. まとめ
高齢化が進んでいくにあたり、観光・旅行業界では、ユニバーサルツーリズムが今後ますます注目を集めると考えられます。
観光・旅行に関わるビジネスを行っている企業の方は、この記事を参考にユニバーサルツーリズムの提供を検討してみてはいかがでしょうか。
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