人生100年時代の生存戦略を読み解く「鎌倉殿の13人」考察 | シニアド

人生100年時代の生存戦略を読み解く「鎌倉殿の13人」考察
新連載企画 2022.05.20

人生100年時代の生存戦略を読み解く「鎌倉殿の13人」考察

歴史上の人物たちから学ぶ、新たな視点と生きるためのヒント 3-後編

2022年のNHK大河ドラマは『鎌倉殿の13人』。脚本は、『新選組!』、『真田丸』に続き、三谷幸喜氏が務めます。

舞台となるのは、平安末期から鎌倉時代前期。北条義時を主人公に、源頼朝の挙兵から源平合戦、鎌倉幕府の樹立、御家人による13人の合議制、承久の乱まで激動の時代を描きます。朝廷と貴族が政治の実権を握っていた時代から、日本史上初めて、武家が政治を行う時代へと突入する、まさに歴史の大きな転換点とも言うべき時代。ここから中世という時代の幕が開く歴史のターニングポイントを、三谷氏らしいコミカルな演出も交えながら描く、予測不能のエンターテインメントです。

このコラムでは、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を深読みしつつ、ドラマの中に描かれる史実を取り出して解説します。そして、歴史上の人物たちの生き方や考え方から、現代に活用できる新たな視点を紹介していきたいと思います。

目 次

【3-前編】はこちらから

  1. 政治的なかけひきを察して動くことができなかった時政
  2. 源義経もこれまでのイメージを覆すサイコパス?梶原景時は悪人なのか正義を貫く人なのか
  3. 他の人が貼ったレッテルに惑わされずに本質を見るということが大切

1. 政治的なかけひきを察して動くことができなかった時政

挙兵してすぐに甲斐源氏のもとへ同盟の交渉に出かけた際には、頼朝を見限って武田信義に付くことすら考えていた時政ですが、二度目の交渉では見事、武田信義を口説き落とすことに成功しました。が、武田信義を頼朝の元へ連れて来るのではなく、合戦の場で合流するという約束を取り付けただけでした。

先述したように、同時代の関白が記した『玉葉』では、源頼朝ではなく武田信義を富士川の戦いの大将としています。この治承4年(1180年)10月~11月の時点において、朝廷側の人間は、頼朝が源氏の棟梁として絶対的な立場であると、まだ認識はしていなかったのかもしれません。

そして、おそらく、三谷氏もこの解釈に則って脚本を書いていると考えられます。第9回「決戦前夜」では、頼朝が黄瀬川に着陣した際、武田信義は自分が大将であり、頼朝の上に立つかのように「兵衛佐殿が我が武田に参陣くださったぞ」と発言しています。そして、一方の頼朝は「富士川に行く前に立ち寄ったまでである」と宣言し、言外に「貴殿の下に付いて戦うわけではない」と滲ませ、あくまでも「源氏の棟梁は自分である」という姿勢を貫いているのです。

さらに、武田信義は頼朝に酒をすすめて酔わせ、約束した期日よりも前に、こっそりと夜襲を仕掛け、手柄を独り占めしようとします。甲斐源氏が中心となって平家を滅ぼし、源氏の頂点に立つ野心を持つ人物のように受け取れます。

武田信義の抱く野心を考えると、頼朝としては「源氏の棟梁」として、一番上に立つのは自分だということを、事前に武田信義から挨拶に来るという形を取らせることで示したかったはずです。

そんな頼朝の胸中や源氏内のマウントの取り合いを察することなく、「甲斐源氏の大きな戦力が加わり平家を撃退できさえすれば良い」と考え交渉をまとめた時政は、考えが甘かったと言わざるを得ません。政治的なかけひきまで考えが及ばなかったために、「源氏の棟梁たるわしが呼んでおるのだ」、「わしに出向けと申すか、あべこべではないか」と頼朝から叱責されているのです。

とはいえ、今後、史実通りに話が進むとすれば、時政が朝廷との交渉役を担う場面が出てくるはずです。その時、どのように時政が描かれるのでしょうか。楽しみなところです。

2. 源義経もこれまでのイメージを覆すサイコパス?梶原景時は悪人なのか正義を貫く人なのか?

今回の『鎌倉殿の13人』で、従来のイメージを覆す人物として描かれているのは、北条時政だけではありません。これまで、源平合戦で大活躍したものの実の兄である頼朝に討伐されてしまう悲劇のヒーローとして描かれることの多かった源義経(菅田将暉)ですが、『鎌倉殿の13人』の義経は、これでは討伐されても仕方がないと思われるような狂気をはらんだサイコパスな人物として描かれています。

義経
義 経 像

「判官びいき」という言葉が生まれるほど、多くの人に愛される義経ですが、「義経=悲劇のヒーロー」像を作ったのは、『平家物語』、『源平盛衰記』、『義経記』といった軍記物語をはじめ、謡曲、歌舞伎、浄瑠璃といった後世に生み出された数々のフィクションであると考えられます。

現代になってからも、ごく一部のフィクションを除いて、イケメンで悲劇のヒーローとして描かれることが多く、過去の大河ドラマでも主役として描かれたことのある義経を、ダークな人物として描くのは、なかなか思い切ったアレンジと言えるでしょう。

本作では、兄の愛情を独り占めしたいがあまり同母兄・義円(成河)を陥れ、結果として亡き者にしてしまうという、深い闇を持つ人物として描かれています。政子(小池栄子)への常識を逸した甘え方から推測するに、乳児期に父母と引き離されたため、家族や年長者からの愛を渇望する大人に育ってしまったといったところでしょうか。
梶原景時(中村獅童)の讒言が義経を悲劇へと陥れるため、これまでのフィクションでは「義経=ヒーロー」、「梶原景時=悪人」として描かれることが多かったのですが、本作では梶原景時に関してもまた新しい一面を見ることができそうです。

朝比奈切り通し
【朝比奈切り通し 梶原大刀洗水】
梶原景時が上総広常を討った後、この湧き水で太刀の血のりを洗い流したという伝説が残されている

第11回「許されざる嘘」で、義時から出仕を請われた梶原景時は「わしは頑固で融通がきかない。人の間違いをいちいち正さなければ気が済まぬような男だ」と自らのことを評しています。そして、実際に義経の犯した「間違い」をすぐさま頼朝に告げているのです。

義円が「墨俣川の戦い」に出陣を決めた経緯に義経が絡んでいたというのも、その策略を見抜いた梶原景時が頼朝に注進するというのも当時の記録にはありません。これは、三谷氏の完全なる創作です。

有名な梶原景時の讒言につながる伏線として、二人の人物造形を視聴者に理解させるため、おそらくこの時点で描いておいたのでしょう。この先、あの有名なエピソードがどう描かれることになるのか、今後二人の関係性がどうなっていくのか、視聴者の期待も高まったのではないでしょうか。

3. 他の人が貼ったレッテルに惑わされずに本質を見るということが大切

私たちが現代において「古くからの常識」だと思っているものは、実は常識ではないかもしれません。

江戸時代以降、歌舞伎や文楽といった芸能の分野が大きく進化・飛躍を遂げたために、それ以前の歴史上の人物は、フィクションのフィルターを通して庶民に受け入れられることとなりました。北条時政や梶原景時は悪人、源義経は悲劇のヒーローというのも、後世のフィクションによって貼られたレッテルです。

「この人はこういう人物である」と習い、長年思い込んできたことに関して、その常識を払拭するのは難しいかもしれません。しかし、そういった思い込みをはずしてみると、苦手だった人物の魅力を再発見することにもつながるのではないでしょうか。

これは、歴史上の人物だけではなく、現実の人間関係にも活かせるのではないかと思います。「周囲から悪い噂を聞いていたけれど、付き合ってみたら実は良い人だった」ということは、現実の世界でも往々にして起こるのではないでしょうか。

並木由紀(ライター、小説家) 

https://note.com/yuki_nami

大学院では平安時代の文学や歴史、文化を中心に研究。別名義で『平安時代にタイムスリップしたら紫式部になってしまったようです』、『凰姫演義』シリーズ(共にKADOKAWA)など歴史を題材とした小説を手がける。

【公式】 2022年NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』

RECOMMENDあなたにオススメの記事

人生100年時代の生存戦略を読み解く「鎌倉殿の13人」考察

人生100年時代の生存戦略を読み解く「鎌倉殿の13人」考察

歴史上の人物たちから学ぶ、新たな視点と生きるためのヒント 7-後編 【7-前編】はこちらから…

Webマーケティングの定義やメリットとは?主な手法も解説

Webマーケティングの定義やメリットとは?主な手法も解説

近年主流になりつつあるWebマーケティングですが、定義や重要性を深く理解できていないという方も多い…

人生100年時代の生存戦略を読み解く「鎌倉殿の13人」考察

人生100年時代の生存戦略を読み解く「鎌倉殿の13人」考察

歴史上の人物たちから学ぶ、新たな視点と生きるためのヒント 7-前編 2022年のNHK大河ド…

シニアマーケティングの成功事例と失敗しないポイントを徹底解説

シニアマーケティングの成功事例と失敗しないポイントを徹底解説

健康寿命の延びが著しく、少子高齢化の進む日本では、第二の人生に対して意欲的なアクティブシニアが増加…

シニアに向けた効果的なSNS広告出稿をご紹介

シニアに向けた効果的なSNS広告出稿をご紹介

SNSと聞くと「若者が利用するもの」というイメージをする方は多いでしょう。 しかし、近年はシ…

媒体資料ダウンロード
PAGE TOP