人生100年時代の生存戦略を読み解く「鎌倉殿の13人」考察 | シニアド

人生100年時代の生存戦略を読み解く「鎌倉殿の13人」考察
新連載企画 2022.04.20

人生100年時代の生存戦略を読み解く「鎌倉殿の13人」考察

歴史上の人物たちから学ぶ、新たな視点と生きるためのヒント 2-後編

【2-前編】はこちらから

2022年のNHK大河ドラマは『鎌倉殿の13人』。脚本は、『新選組!』、『真田丸』に続き、三谷幸喜氏が務めます。

舞台となるのは、平安末期から鎌倉時代前期。北条義時を主人公に、源頼朝の挙兵から源平合戦、鎌倉幕府の樹立、御家人による13人の合議制、承久の乱まで激動の時代を描きます。朝廷と貴族が政治の実権を握っていた時代から、日本史上初めて、武家が政治を行う時代へと突入する、まさに歴史の大きな転換点とも言うべき時代。ここから中世という時代の幕が開く歴史のターニングポイントを、三谷氏らしいコミカルな演出も交えながら描く、予測不能のエンターテインメントです。

このコラムでは、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を深読みしつつ、ドラマの中に描かれる史実を取り出して解説します。そして、歴史上の人物たちの生き方や考え方から、現代に活用できる新たな視点を紹介していきたいと思います。

目 次

【2-前編】はこちらから

  1. 「治承三年の政変」を受け鳥羽殿に幽閉されていた後白河法皇
  2. 後白河法皇は頼朝の深層心理が生み出したもの? はたまた稲荷神なのか?
  3. 時代が変われば常識も変わる。ドラマから多視点で物を捉えることの大切さを学ぶ

1. 「治承三年の政変」を受け鳥羽殿に幽閉されていた後白河法皇

では、頼朝のもとへ生霊となって現れた当時の後白河法皇は、思い悩んで魂が抜け出てしまうような状態に置かれていたのでしょうか。

後白河法皇の生霊が夢枕に立った、第3回「挙兵は慎重に」は、平清盛(松平健)が後白河法皇を幽閉し、自分の孫である安徳天皇を即位させたことによって都に激震が走ったという衝撃的なシーンから始まりました。後白河法皇は、鳥羽殿という場所に閉じこめられてしまい、政治に関与することができなくなってしまったのです。

これが世に言う「治承三年の政変」です。安徳天皇の即位によって、高倉院政が開始されますが、高倉院政とは名ばかりで政治の実権を握っていたのは安徳天皇の外祖父にあたる平清盛でした。

鳥羽殿には、信西の子である藤原成範・藤原脩範・静憲と女房ぐらいしか出入りが許されないような、厳しい幽閉生活だったと伝えられています。まさに、魂だけ抜け出し、生霊となって助けを求めでもしなければ、どうにもならない状況に置かれていたと言えるでしょう。そんな後白河法皇の状況を受けて起きたのが、以仁王(木村昴)の挙兵でした。以仁王は、後白河法皇の第三皇子に当たります。頼朝の叔父である源行家(杉本哲太)が、以仁王の令旨を携えて都からやって来たのには、こういう背景があったのでした。

第6回「悪い知らせ」では、安房へと海を渡る場面で後白河法皇が現れました。夢枕ではなく、起きている頼朝のもとに現れたのです。舟に入ってしまった水を手桶によって掻き出していた頼朝ですが、その桶の水に後白河法皇の姿が映っていたのです。

2. 後白河法皇は頼朝の深層心理が生み出したもの? はたまた稲荷神なのか?

このように、当時の後白河法皇の状況を考えると、生霊として頼朝の元に現れるのも自然な流れのように思えます。しかし、後白河法皇の生霊の正体として、実はもうひとつの可能性が考えられるのです。

佐助稲荷神社1
佐助稲荷神社2

鎌倉に、佐助稲荷神社という稲荷社があります。頼朝の挙兵には、この神社の稲荷神が関わっているという伝承も残されているのです。

伊豆で流人生活を続けていた頼朝の夢の中に、ある時、老人が現れます。そして、「何かあれば助けてやるから、平家打倒の兵を挙げるように」と頼朝に告げたのでした。頼朝がそなたは誰かと尋ねると、「隠れ里の稲荷である」と答えます。稲荷神の助けを得た頼朝は、挙兵し、無事平家を倒しました。その後、自らを助けてくれた稲荷神を探したところ、鎌倉の隠れ里に祠が見つかったので、家人である畠山重忠に命じて、この稲荷社を建てたのだと伝承は告げています。

佐助稲荷神社という名前の由来も、頼朝と関係があります。『鎌倉殿の13人』の中でも、頼朝は「佐殿」と呼ばれています。その「佐殿」を「助けた」稲荷なので、佐助稲荷と呼ばれるようになったという説があるのです。

また、頼朝を助けた稲荷から「助け稲荷」と呼ばれていたのが、いつしか「佐助稲荷」となったという説もあるようです。

第5回「兄との約束」で登場した後白河法皇は、「お前には神仏がついているのだから」と頼朝に告げました。この台詞を深読みするならば、この時の夢に現れた後白河法皇は、幽閉され身動きできない状況から魂だけで助けを求めにやって来た後白河法皇であると同時に、後白河法皇の祈りや坂東武士、源氏一門の切なる願いを聞き届け、助けようと現れた稲荷神でもあるのかもしれません。

一方で、さらに現代的な解釈もそこに加えるのであれば、負け戦の逃亡中、桶の中に後白河法皇の姿を垣間見るのは、頼朝自身が抱く「法皇さまに申し訳が立たない」という気持ちが生んだ幻覚とも取れます。そして、心機一転、再起をはかろうとした時に、笑顔の後白河法皇が現れるのも、「これでいい、きっと法皇さまも喜んでくださる」という頼朝の心象風景を映し出しているのかもしれません。

3. 時代が変われば常識も変わる。ドラマから多視点で物を捉えることの大切さを学ぶ

このように、同じ場面であっても、「平安時代の人々の常識」というフィルターをかけて見るのか、「現代人の常識」だけで見るのか、あるいはそれらをミックスして見るのかで、そこに描かれているできごとの意味は大きく変わります。

そして、そのどれかひとつだけが正解だとも言えないでしょう。

第7回「敵か、あるいは」で、上総広常は、何度も頼朝の器量を見定めようとしていました。自らがいただくに足る、坂東武士たちが命運を賭してもよい人物なのか、本当に天を味方に付けた人物なのかどうかを見定めようとしたのです。結局、頼朝は気まぐれな浮気心を出したおかげで、平家方の仕掛けた襲撃を運良く逃れることができました。これもまたコミカルなシーンではありましたが、まさに神仏に選ばれ、その加護を一身に得ている人物とも受け取れる描き方でもあります。

後白河法皇の生霊は、後白河法皇本人でもあり、頼朝を助ける稲荷神でもあり、頼朝自身の心が作り出した幻影でもあるのです。そういった多重的な見方をすることで、ドラマはより深みを増すのではないでしょうか。もちろん、当時の常識など知らなくてもかまいません。無理に深読みなどせずに見ても、ただのコントとして、十分に楽しめる作りになっているところがさすが三谷氏と言ったところでしょう。

現実を生きて行く上でも、物事をひとつの凝り固まった見方で決めつけることなく、さまざまな人の立場に寄り添って、多視点から物事を見ていくというバランス感覚を持つことは、人間関係や社会生活を円滑に保つ上でも大切なことです。特に、年を重ねると、今まで自分が信じてきた常識が100%正しいと考えて、他人を責めてしまうといったトラブルも起こりがちです。しかし、時代がほんの少し変わるだけで、多くの人が考える常識が180度変わることもあるのです。

歴史を題材にしたドラマを見ることは、現代に生きる人々の物の見方に加えて、昔の人々の常識という新しい知識や物の見方を得る手がかりにもなります。 

並木由紀(ライター、小説家) 

https://note.com/yuki_nami

大学院では平安時代の文学や歴史、文化を中心に研究。別名義で『平安時代にタイムスリップしたら紫式部になってしまったようです』、『凰姫演義』シリーズ(共にKADOKAWA)など歴史を題材とした小説を手がける。

【公式】 2022年NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』

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