東大前駅切りつけ事件に見る「親の限界」:戸田佳孝容疑者の供述にシニア世代が抱く現実と不安
「仕送りがなくなった」43歳無職の現実
戸田佳孝容疑者は、愛知県名古屋市出身の無職。以前は親から毎月仕送りを受けて生活していましたが、父親の死をきっかけに送金は途絶え、その後も母親に金銭を無心するようになったとされています。事件前、母親から援助を断られたことが、犯行の一因となったとの供述もありました。
支援か依存か:子どもとの距離感に悩む高齢者
戸田容疑者は「生活が立ち行かなくなったことも事件の理由」と話し、また「親からの教育虐待があった」「子どもがぐれて罪を犯すことを世間に示したかった」とも供述しています。男子大学生とは面識がなく、無差別的な犯行とみられています。
こうした供述に対しては、「親に対する甘えと逆恨みのように見える」との厳しい意見がある一方で、「支援を断った母親の立場を考えると胸が痛む」とする共感も。
特に70代以上の親世代は、「年金とわずかな貯蓄で自分の老後も不安なのに、子どもを支援し続けなければならない状況」に精神的・経済的疲弊を感じているといいます。
「親子仲は良かった」という証言が意味するもの
事件後、戸田容疑者の近隣住民からは「親子仲は良い印象だった」という証言も聞かれました。しかし、それが「実は経済的依存の上に成り立っていた関係」だった可能性が高く、親の善意が限界を超えたときに歪んだ結果が事件として表出したのではないか、という指摘もあります。
「中高年引きこもり・無職」の社会的孤立が背景に
戸田容疑者のように、就職氷河期を経て正規雇用に就かず、家庭に依存したまま中年期を迎える人は少なくありません。いわゆる「8050問題」として知られてきたこの課題は、今回の事件で改めて社会に警鐘を鳴らす結果となりました。
シニア世代の中には、「子どもの就労支援を求めたが効果がなかった」「自治体の窓口に相談しても解決につながらなかった」と語る人も。個人の家庭だけで支えきれないケースが多く、社会全体で中高年の孤立・無業問題に対応する必要性が再認識されています。
まとめ:親に頼り続ける社会構造の限界と、支援の再構築を
戸田佳孝容疑者による切りつけ事件は、「親が最後のセーフティネット」になっている現代の構造的な課題を浮き彫りにしました。加害者の行動は決して許されるものではありませんが、その背後にある家庭内の経済関係や精神的孤立は、放置すれば再び同様の悲劇を生む可能性があります。
シニア層にとっては、経済的にも精神的にも「もう限界」という声が強まる中、個々の家庭に責任を押し付けるのではなく、社会全体で支える仕組みの強化が急務です。